閲覧者の皆様こんにちは、競馬総合サイトG-ZEROへ、ようこそ。そして血統研究所にも足を運んで頂き嬉しく思います。執筆者のtaku.Oと申します。
前回、サラブレッドの血統を9~12代目まで遡って、評価手法を用いて診断を行うとアナウンスさせて頂きましたが、今回はかなり簡単にではありますが、私自身の血統感の根底に流れる血の見方と、それらから導き出した11項目に及ぶ主要項目についての説明を行いたいと思います。
まず、クロスを見て評価を行うと言うものの、どのように評価を行うのかを説明したいと思います。まず、理論の基礎は五十嵐先生が考案された五十嵐理論が土台となっております。この理論を個人的に学んだ上で、クロス理論として有用だと思う考えを追加し、不要だと思われる部分を削除しています。また、重要だと思われる項目と、さほど重要だと思われない項目について、配点に差を設けさせていただいております。90年代以前の血統であれば等価に扱ってよい部分ではあったと思いますが、現代的な名馬に当てはまらない部分も、多々見うけられるようになりました。その為、各項目について差異を設けさせていただいております。これを個人的に傾斜配点方式と定義しております。血統表において見るべき、それぞれの部分を11項目にわけ、最高60点満点において評価をしています。また、特別配点項目を設け、クロス以外において評価すべき部分を特別配点しております。以下に各項目について簡単にではありますが、説明をさせて頂きます。
Ⅰ 主要項目
- 主導 (1~10点)
主導とは、クロス馬の中から、当該のサラブレッドの血統を明確にリードする血を指します。この主導は、血統全体を通じての多数派の流れを汲み、その他のクロス馬と強固に結合する事が好ましいと言えます。また、主導勢力は複数であっても構いませんが、その場合は、それぞれのクロスが強固に連動し、特定のブロックに集合している事が有効になる条件になります。主導が明確な配合は、開花率の高さや決め手の良さに良い結果がでると判断しています。
- 結合 (1~10点)
結合とは、クロス馬が相互に連動しているかについて評価を行います。連動している否かの判断は、互いに共通の祖先を持つか否かによります。各クロスの結合は、近い世代においてシンプルに結合を果たしている状態を、好ましいと考えますが、結合単体の評価においてはそこまで重視はしません。結合がシンプルにしっかりと行われている配合は、安定感に良い結果がでると判断しています。
- 土台・血の流れ (1~5点)
土台・血の流れとは、当該のサラブレッドの血統において主導と考えられる血統の祖先が7代目以降において、多数クロス馬として存在しているか否かで評価します。また、土台構造を形成する血は複数の連合勢力でも構いません。単純に連数が多ければ評価が高くなる訳ではなく、4代目の祖先を起点とした16箇所のブロックにおいて存在するか。更に、その土台構造を形成するクロス馬からの主導勢力への、血の流れがシンプルか否かで評価をします。この血の流れが良い配合は、決め手に良さが出ると判断しています。
- 弱点・欠陥 (1~3点)
弱点・欠陥とは、5代目に位置する祖先馬32頭を基準とした各ブロックにおいて、6~8代目においてクロスが存在しない場合を弱点。9代目以降においてもクロスが存在しない場合を欠陥として判定します。影響度バランス上、強力に主張している部分に弱点・欠陥が存在した場合、特に重視します。弱点や欠陥は、現代的な血統においてさほど重要視はしませんが、弱点や欠陥が多数存在する配合は、開花率や成長力にマイナスの影響が出ると判断しています。
- 影響度バランス (1~3点)
影響度バランスとは、6代目までのクロス馬について調べます。6代目=1点、5代目=2点、4代目=3点…として配点を行い、どの部分から強く影響を受けているかを視覚化します。極端に影響が強い、もしくは弱い部分がある場合は評価が下がります。影響度バランスは、現代的な血統においてさほど重要視はしませんが、バランスが良い配合や強調された部分を上手く生かした配合は安定感や、瞬間風速的な強さに良さがでると判断しています。
- 血の集合 (1~7点)
血の集合とは、当該のサラブレッドの血統内において血をしっかりと集合させている部分があるか否かで評価をします。この部分は複数あっても構いませんが、影響度バランス上強調された部分なのか否か、またその部分に主導勢力を含むか否かで評価を行います。この血の集合が良好な配合は開花率の良さや、早さに良さがでると判断しています。また、影響度バランスとの兼ね合いで、瞬間風速的な強さに良さが出ると判断しています。
- 質 (1~5点)
質とは、当該のサラブレッドの強い影響を持つクロスの質(当該馬の血統評価)が高いかを中心に、父母の血の質を含め評価を行います。近い世代においては、基本的には祖父母までの血の質を考慮しますが、母方の血の質を特に重視します。質が高い配合は自分で流れをつくるようなレースに向いていると判断しています。
- 再限度 (1~7点)
再限度とは、当該のサラブレッドの血統においてクロスした血によって、有用な祖先が再現されているか否かで評価を行います。この再現が良好な部分を多数持つ事により当該のサラブレッドにおいてその能力が再現されていると判断します。基本的には祖父母6頭までの再限度を見ますが、母方の再限度を特に重視します。再限度が高い配合は、早期の開花や成長力に良さが出ると判断しています。
- スピード (1~5点)
スピードとは、当該のサラブレッドの血統内において、スピード系のクロスが多い場合評価が上がります。また、それらの血が主導と密接に結合を果たしているか否かによっても評価がかわります。距離適性に影響を与えます。また、7代目に配されたクロスも重要視します。スピードに良さがある配合は現代競馬においては有利だと見ています。どのような形にせよ、スピードの無い配合は勝ち上がりに苦労すると判断しています。
- スタミナ (1~5点)
スタミナとは当該のサラブレッドの血統内において、スタミナ系のクロスが多い場合評価が上がります。また、それらの血が主導と密接に結合を果たしているか否かによっても評価が、かわります。距離適性に影響を与えます。また、7代目に配されたクロスも重要視します。スタミナに良さがある配合は現代競馬において有利だとは言い難いものの、厳しい流れに適性を発揮しやすくなると見ています。
- 特別配点 (0~5点)
特別配点とは、クロス馬のみを足掛かりにサラブレッドの能力を考察する五十嵐理論の原則から外れた項目です。当該のサラブレッドの血統内において、クロス馬以外に着目すべき部分がある場合、その部分に配点します。また、この特別配点によって、最高点である60点を超える事はできません。以下に、現在使用している項目を列記しておきます。またこの点数はあくまでも+〇点という表記で行います。
〇 主導牝馬クロス(1点) 主導が牝馬クロスであった場合、特別に1点を配点しています。一説によると、産駒への影響度は牡馬40~45%、牝馬55~60%程度との事で、この部分を加点しています。有名な所ではサンデーサイレンス産駒のAlmahmoud主導ですが、Cosmahの系列クロスやNatalmaの系列クロスを持つ配合馬も現れています。
〇 主導牡牝を通じたクロス(1点) 主導となるクロスの産駒のそれぞれが牡馬・牝馬であった場合、特別に1点を配点しています。これは、産駒が多様なラインから活力を得ている証明と考え、遺伝に良い影響を与えると考える為です。近年では凱旋門賞2連覇を果たしたEnableがこの配置を持っています。
〇 父・伴性血縁牡馬(2点) 父の血統の5代目までに(つまり、自身血統では6代目まで)X染色体上の経路にクロスを持つ場合に、特別に2点を配点します。牝馬の持つX染色体は100%母と父の母からの遺伝によります。この経路上にクロスがある場合、遺伝力が強化する可能性が予想されます。近年では、エルコンドルパサーが種牡馬として、その配置を持っていました(この配点は当該馬が牝馬である事に限ります)。
〇 母・伴性血縁牝馬(3点) 母の血統の5代目までに(つまり、自身血統では6代目まで)X染色体上の経路にクロスを持つ場合に、特別に3点を配点します。牝馬の持つX染色体は100%母と父の母からの遺伝によります。この経路上にクロスがある場合、遺伝力が強化する可能性が予想されます。近年では、ディープスカイの母アビが繁殖牝馬として、その配置を持っていました。
〇 産駒複数活躍繁殖牝馬(1点) 母の産駒において複数の重賞勝ち馬を輩出している場合、特別に1点を配点します(基本的にJRA重賞勝ち。地方交流競走も含みます)。これは、その母が持つX染色体上に、それ以外の繁殖牝馬群と比較して優位な差があると考える為です。
以上が、主要11項目の説明になります。これらの項目を用い、当該のサラブレッドの血統に対し得点をつけ、配合から見た適性を見抜くのが、最大の目標であります。つまり、産駒のデビュー前、更に言えば配合を思い描く段階で、その配合に対する適性を見抜く事を目標に置いているわけです。
次回は、これらの評価を用いて適性面への評価を行っていますが、こちらの説明をさせて頂ければと思います。今回も閲覧ありがとうございました。