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蟻が10匹。

今は、レースから1時間後くらい。
熱でも出たかってくらい、ぐったりしている。
なんというか、あまり考えないようにしてはいたが、自分の中で葛藤というか、所謂天使と悪魔がやり合っていたのだろう。

そう、ルメールと福永祐一ばりに。

いや、違う。
まずは…

コントレイル号、三冠達成おめでとうございます。
関係者の方々の素晴らしい仕事と、コントレイル号の素晴らしい走りで成し遂げられた偉業に、胸がいっぱいで言葉が見つかりません。
ただただ、良かった、おめでとうと繰り返すだけです。

ほんとに素晴らしい。

世の中が苦しい時に、名馬が現れるなんて言いますが、それがコントレイルであったとは…

正直に言いますと、私はやはり8代クロス系で血統を見てしまう人間で、他に期待した馬がいました。
そんな私の思いを、実際の走りですべてコントレイルが塗り替えていったのです。

レースを振り返りましょう。
んー、ずっーとルメールがそばにいたね。
インタビューで福永祐一騎手が言ってましたが、折り合い面も、レース面も辛い展開だったと思います。
しかし、自分の気持ちを大切にというような言い方をしていたと思うけれど、自分を信じ、馬を信じ抜くことが、並んで抜かせないことに繋がったのではないか?
そんなふうに思いました。

レースを見ているときは、4角で一気に吹かさず、突き放さずに、常に少しだけリードしていたのを見て、これは抜かれないだろうなと。
逆に負けるなら、4角回って並んだように見えたところで、ルメールとアリストテレスが突き放したんじゃないかな?

馬を信じる。
馬に自分の動揺が伝わらないようにする。
そんなふうに私は感じたが、そこに迷いがあり、馬に伝われば、コントレイルはすごく賢い馬でやめてしまうのではないか?
我々人間だってそうだろう。

「どうせ、おまえはこんなもん」
「ま、ここまでやれたんやけ、ええんやない?」
「おまえ、大丈夫か?やばくないか?」

なんて言われたら、やる気なくすだろう。
ん?俺のこと信じて任せてくれたんやないの?
こんな事は、究極的な所で表れる。
そして、だいたい、ものすごい失望する事になる。

終わった後に、「いやあ、やべぇなと思ったけどさ、お前ならなんとかすんだろと思ってさ。やれるんじゃないかってさ。」
こんなふうに言われるような関係は、だいたいうまくいく。

正直、福永祐一という男を軽く見てた。
見てた時期があった。
だけど、矢作調教師が言うように、ワグネリアンの後、日本ダービージョッキーになってから、信頼に足りる男になったのだろう。

武豊が、横山典弘が、そんな男たちが乗って、あの結果ならしょうがない。
任せたのは我々なのだから。
そんなふうに思わせる男達の中に、福永祐一も加わったという事なんだろう。

レースが終わり戻ってきた所で、ちょっと照れたように3本指を上げる。
すぐに、コントレイルを指差す。

「3冠は彼がしたことだよ。」

そんなふうに見えた。
インタビューでも、馬への信じる気持ち、感謝をものすごい感じた。

ほんと申し訳ないけど、かつては、偉大すぎる父を持つアホな二代目、ええとこの坊ちゃん、ミスター無責任。
そんなふうに見えていたけれど、今の福永祐一は、素晴らしい仕事をする、責任感のある男に見える。

無敗の3冠馬の鞍上に失礼だけれど、私はそう思っていたし、一時期は「もう絶対に福永祐一なんて買わない」とまで思っていた。
たが、今は「もう絶対に福永祐一を買わないなんて、言わないよ絶対」だ。

こーゆーの、なんでゆーか知ってる?
マッキー症状て言うんだよ。

やっぱ面白いね競馬。
以前の福永祐一なら、コントレイルは…

しかしなんか疲れた。
ゴールの瞬間、すごいほっとしたもん。
何かあるとしても、今じゃないでしょ?と思っていても、競馬に絶対はないんだもん。
神戸新聞杯の後だって、熱発とか、脚に…とかあっても
おかしくないし、そんな見たくない現実をいくつも見せられてきたのが競馬ファンだしね。
モーターレースとか考えるとさ、機械ですら…なのに、サラブレッドは生身だからね。

まあ、そんな見方をするようになったってことは、歳食ったからだろうね。
最高の瞬間を待ち侘びているときに、奈落の底まで叩き落とされる。
だから、ショックを想像しながらになる。
手放しで、喜ぶ事だけは難しい。

ほんと、普通に生活することが、なかなか難しい今の世の中で、よくぞここまでの仕事をと、先週も書いたけれど、関係者の方々に感動と感謝です。

先週の、デアリングタクト陣営もそうだけど、コントレイル陣営も次は、日本一を狙いに行くという。

はっきりいって、期待しかない。
どんな結果であれ、とにかく無事なゲート入りを願うのみだ。

私にとって3冠馬と、日本最強馬はいつまで経ってもナリタブライアンだろうと思う。
それほどに若い時に衝撃を受けたし、ディープインパクトもオルフェーヴルも、そこまでの衝撃は受けなかった。

でもいまは、「じゃけぇどしたん?」
そう思う。

あの時の衝撃とは違うけれど、私も歳を取って感動することも減ったし、若い時の豊かな感受性でというわけではない。
これは、人の馬券を笑うなに通じるものがあるのかもしれないが、人の名馬も笑うなだろう。

それぞれに人生があり、それぞれの夢が、希望が、家の灯りがあり、それは比べるものではないのだろう。

私も、コントレイルのように強く!とか、福永祐一のように良い変化を!とか難しいけれど、変化を恐れず、向かっていきたいなと思う。

クソみたいな俺でも、転がり続ける限り、形は変わるのだと信じたい。
そしていつか、俺を見てくれている人に、「pirocksええ男になったねぇ」とか言われたい。

違うな。
自分の思うこと、信じることを優先させて、それでも誰かと一緒にいられるようになりたい。

しかしまさか、福永祐一に感動させられる日が来るなんて…
いや、感動とは違うのかもしれない。

でも本当に、良かったなと思う。
本当に本当に良かったなと思う。

コントレイルは、また一つ上のステージに、福永祐一を上げたのかもしれない。
人は縁によって、何度でも生まれ変われるのだろう。

さあ、俺もまた誰かに、何かに出逢いに行こう。
そして、そこでなにかを分かち合えれば…

ほんと、今年は血統観やら競馬観やら、グルグル変わるで忙しいわ。

明日には真逆のこと言ってたとしても、ごめんねですましていくぜ!

とにかく、最高だったぜ!
コントレイルと福永祐一!
蟻が10匹!

pirocks

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