見事、皐月賞馬の栄冠に輝いたのはジャスティンミラノ。
初の中山、ハイペース未経験…
何も関係なかった。
強い馬は強い!
皆さんもそう感じたのではないだろうか。
一週前の追い切りに乗ったのは藤岡康太騎手だったという。
レース後、引き上げてきた戸崎騎手と抱き合う友道康夫調教師。
レース後にこんなコメントを残した。
「先日、落馬事故で亡くなられた藤岡康太騎手のご冥福をお祈り申し上げます。康太くんはうちの厩舎の調教に乗ってくれて、最後の最後までジャスティンミラノ乗ってくれていました。この勝利は彼のおかげだと思います。本当にありがとうございました。今日は馬の名前でなく、「康太!、康太!」と叫んでいました。」
騎乗した戸崎圭太騎手も…
「最後のこの差は、康太が後押ししてくれたのだなと、康太も喜んでくれているんじゃないかと思います。康太、ありがとう、お疲れ様でしたと伝えたいです。」
私の要約です。
皆さんは検索して全文読んで欲しいです。
改めて、さまざまな人のおもいを乗せてサラブレッドは走っているのだなと。
生産、育成、調教…
私たちが見ているのは、最後のほんの少しの部分だけ。
事実は小説よりも奇なりだが、私が小説家ならこの皐月賞という物語、最後に藤岡康太騎手にこう語らせる。
「友道先生、戸崎さん、僕の力ではないですよ。馬が強かったんです。」
レースはメイショウタバルの逃げで始まった。
あの形なったら行かざるおえない、暴走気味の逃げ。
レコード決着を演出してしまった浜中騎手はレース後に、「返し馬は落ち着いていたが、ゲート入りでテンションが上がってしまった。リズムよく運ぼうと思ったが、掛かってしまいました。」と語った。
最後の直線、最初に先頭に立ったのは、ジャンタルマンタルと川田将雅。
ハイペースの2番手集団から早め早めの競馬。
おもわず、「川田来た!すごい!ジャンタルマンタルだ!」と声が出た。
ハナから馬券から外していた私は、やられたけれど素晴らしいものを見ていると思った。
ジャスティンミラノも来てる!
その後ろにシンエペラー!
またその後ろにコスモキュランダとモレイラ!
脚色はどうだ?届くのか?
最後の坂、2馬身?3馬身?
これはセーフティーリードか?
ジャンタルマンタルはやりきれるのか?
シンエペラーは伸びない…
ジャスティンミラノとコスモキュランダが迫る。
交わすか?交わすのか?変わるのか?
ジャスティンミラノだ!
レース後、2着に敗れたモレイラ騎手は、「ビデオを見て、長い脚が使える馬というイメージでした。良いスタートで、前の位置が取れ、スムーズに運べましたが、一頭だけ前にいました。」
3着の川田騎手は、「全力でトライして、素晴らしいと思えるレースでした。残り1ハロンで完全に止まりましたが、気持ちで走り切ってくれました。」
敗れたとはいえ、コスモキュランダもジャンタルマンタルもナイスチャレンジ、ナイスファイトだし、モレイラ騎手も川田騎手も最高の競馬をしたと思う。
ただ、モレイラ騎手が語ったように1頭だけ前にいた。
ジャスティンミラノだけが。
残念だったけれど、素晴らしい判断をしたと思うのが横山典弘騎手。
ゲート前で異変を感じ、馬を止めた。
ダノンデサイルは右前肢ハ行のため除外となった。
生涯一度のクラシックのゲート前、非常に勇気のいる判断だったと思う。
なかなかできることではないだろう。
彼の経験が言葉の重さ、信用なのかもしれない。
実況アナウンサーが、全人馬無事にと繰り返す週末だった。
モータースポーツの世界では、安全装備が進化し、昔なら助からなかったものが助かるようになっていると聞く。
それでも、哀しい出来事が起きているとも。
目を背けたくなるような、目を背けられないもの…
競馬の世界も、画期的な安全装備ができないものか…
我々は祈るしかない。
哀しみは時間とともに薄れるような気がするが、消え去ることはない。
何食わぬ顔で、何もなかったように過ごせるようになっても、引金が引かれれば…
どんなに泣きくらしていても時は止まらない。
後ろを向いていても前に前にと運ばれる。
泣きながら笑うしかないのかも…
本当に素晴らしいレースを見て興奮する。
長くても3分くらいの物語。
興奮が去れば、日常は、生活は薄鈍で長い。
何十年か生きてれば、それぞれに触れちゃならないこともあるだろう。
それでもまた週末になれば、届かなかったおもいを胸に馬頭観音の前に立ち、届かぬ祈りを捧げるだろう。
祈るしかできないから、祈ることはやめない。
ほんとは、何も祈ってない。
ただ黙って手を合わせ、そこにいるだけ。
そっと。