給料日、銀行口座を確認して驚いた。
「わしに首括れゆーんか…」
競馬上司は優しくて、あまり少ないと有給を使ったりして調整してくれてた。
ちゃんと出面を確認してない俺の甘えだが…
年末も忙しかったし、年明けもくだらないことに振り回された。
正月休みは長かったけれど、未だにストレスで身体が重い。
それでも一所懸命にできることをやってるつもりだし、週末には疲れたとボヤくくらいには頑張ってる。
神も仏もないのか?
この国が悪いのか?
わかってる。自業自得。自己責任。
給与、待遇の悪い会社で働いてるのが悪い。
でも、それじゃ生きていけない。
俺は他のせいにする。
生まれた時代、生まれた所が悪い。
一所懸命、平々凡々と生きてるだけなのに…報われなすぎる。
金がないなら働けばいいじゃん?
週休2日は甘えでしょ?
今は末端、下層仕事とはいえ、深く考えなくとも他人の命を預かる仕事。
6日出れば事故、災害率が上がる。
自分のためだけにそれは許されるのか?
「まだ若いんだから、疲れたとか痛いとか言わないでよ。もう少し歳とったら、すごく大変になるよ。」
よく言われる。
御高説ありがとうございます。
私はあなたの経験はしたことがありませんが、あなたも私の経験はありませんよね?
若い頃は怪我、大病せずで、自分の身体は強く産んでもらったと思ってました。
30を超えたあたりから体力は落ち、40で現場で立ってるのが辛くなりました。
あなたが言うように私の身体が動くなら、金がないとなれば今でも現場仕事したでしょう。
整形外科ではほぼ問題ないと言われますが、いつまたあの立ってられない状態がくるかと思うと、とてもではないですが現場仕事はできません。
苦しい時に周りに迷惑をかけるのだけはできません。
私を助けるために、他人が怪我をするようになりますから。
私が欲しいのは機械の身体、もしくは安楽死ボタンです。
とまあ、暗い恨み言を書いてみたが、産んだ本人は生きてろというのでね。
借金できるうちが花っていうしね。
けっきょくのとこ、チンピラ人生は行くとこまで行くだけのチキンレースですから。
言われたとおりに死ぬまで働きます。
働いて納税、タバコを吸って納税、酒を飲んで納税、公営競技で納税。
国民の鏡ですから。
週末は焼鳥屋スタートだったのだが、金もないし人と会うのも嫌なので、コンビニ飯晩酌経由で1人鍋に落ち着いている。
疲れ果てた仕事帰りにスーパーによるのは億劫だが、帰ってしまえば誰に気を使うこともない天国だ。
もつ鍋の素を買い、牛蒡、キャベツ、ニラ、追加肉、豆腐に白ワインのボトルを1本。
せめてニラの香りとワインをグラスに注いで…
ダイヤモンドゆかいな夜を過ごそうぜ!
ニンニク汁で腹一杯になるまで野菜を食べる。
ワインが開く頃にはアルゼンチン代表でもボランチでもないがベロンベロンに。
俺のマラドーナはバティゴールを決めることはもうない。
少しサビオラだが、彼女にサネッティとも言われない。
1人でマスチェラーノでイグアインだ。
なんの話かわからなくなってきたが、日曜目覚めると残り汁雑炊を啜りながら、今日は何をしたいか考える。
「安西先生、ボートが打ちたいです。」
土曜、仕事しながらヤケで買った残りがわずかに競馬口座に残ってる。
グリーンチャンネルも解約して朝から競馬な気にもならない。
競艇は年末のグランプリに向けてG1が各地で開催され、面子も面白い。
財布を覗くと…午前中くらいは遊べそう。
少し打ってランチ食べて帰って競馬にするか…
久々に「つのちゃん」と遊びたいしな。
というわけで、のこのこ多摩川に出掛けて行ったのだが…
やはり競艇は難しい。
たった6艇の組み合わせを絞りきらん。
絞ると漏れる…
広げると安い…
「わしゃあどうすりゃええんじゃ…」
「弾はまだ少し残っとるがよぉ…」
茅原悠紀のいる徳山の中国地区選手権を中心に打っていたが…
午前最後、戸田の関東地区選手権に佐藤隆太郎が出てる。
去年、多摩川のインで人気を集め飛び、外枠から優勝戦を勝ちきった男。
スタートは安定して早いが、スローよりダッシュで買いたい…
5コースか…頭まではエンジン的にキツイか?
2着まである?んー。
まずは3連複フォーメーションで広く。
絞り切れないが、頭は絞り、2着3着目は手広く。
重なったところが当たれば…
万舟まではないが…
結果はワンチャン2着目あったが3着。
3連複10倍、3連単40倍くらいだったかな?
なんとか昼飯代くらいでたので、近くの町中華で焼飯&餃子。
ここまでは悪くない流れだ。
勝ち逃げできてる。
家に帰り、「つのちゃん」と喋りながら打ち始める。
「つのちゃん」も去年から良くない。
こっちから見ると、フォームを崩した訳ではないのだが…
この耐える時期が辛い。
フォームを崩さずに負け続ける期間が。
付け焼き刃じゃ勝負にならない。
負け続けても己の武器を磨き続けるしかない。
まあそうはいいつつベテランなので心配はしていない。
博打なんて勝つと思う方が狂ってる。
確証のない未来に賭け、チクショー畜生!となるのが競馬だ。
推しだの、可愛いなどと言っておれるのは女子供だけ。
俺たちは命の次に大切なものを賭けて戦ってるのだ。
サラブレッドは負ければ死。
俺たちは死にはしないだろうが、かなり近いとこまで行く。
サラブレッドとの違いは安楽死のあるなし。
俺たちは最後まで苦しむ。
ほぼパドックだけ見て買っていたのだが…
3連複ボックスにしてれば都合80倍あったはず。
なんというか競艇の弊害か、軸が1頭みたいな感じで買ってた。
当たったと思ったら抜けてる。
抜けてるのはお前の考え方だっつーの。
「つのちゃん」はええとこ見とるのにのうと、慰めてくれたが口座の金が増える訳ではない。
最終まで打ち散らかして終了。
何が面白いの馬券?て感じだった。
終わってから近況などを話していると、ふとなぜ競馬じゃなく競艇にコクを感じてるのかてな話に。
民放BS見ながらだったが、3場開催なのに2場しかパドック流さない。
新聞記者の解説と、芸能人の予想。
競艇だと、タレントのやつもあるが、オフィシャルのやつは元ボートーレーサーたちの船足評価、展開予想があり、元選手なので精度が高いと思う。
競馬だと元騎手とか元調教師だとしても、各関係者に対してのことがあるので難しいだろう。
JRAのアンバサダーとかなると言いやすいかもしれないが、胴元が予想するんかい!てな話になるかもしれんし。
競艇、住之江で解説をよくやられている野添貴裕さんのが良いと思う。
船足評価、展開予想はするが買い目は出さない。
「競艇は推理。」だから、推理のヒントを出す。
あとは皆さんが好きに舟券を購入してください。
話を戻すが、パドック見るだけならグリーンチャンネルでなく、JRA VANらしいのでアレだが、グリーンチャンネルは永遠と文化的なやつとか流して、それとは別に競艇のように各場独自でネットに流すべきじゃないか?
その方が推しを応援する人も良いだろうし、昔みたいに京都だけ買うとかやりやすいんじゃない?
今はネットで全国どこでも買えるからアレだけどね。
昔のように苦労して時間を作って、場外や現場で目の前のレースを買うってのも、売り上げがどうなるかはわからないが、1つ1つのレースを大切に思う気がするけど。
そのうちVRての?ゴーグルつけたら、まるで競馬場で過ごすようにネット投票できる時代とかくるかもね?
カメラアングルとか位置とか好きにできたりね。
まあとにかく競馬場はデカくてさ、何が起きてるかわかりにくいよ。
リプレイも微妙だしね。
そんなこと言ってると、採決も含め説明不足なのがJRAて気もするけど。
二極化するんじゃないかな?
作られた物語で推し物語な人たちが競馬場にいき、競馬を支える馬券購入者は自宅で自分の得たい情報を選択できるとか。
カラオケルームでグリーンチャンネルとかあるみたいだけど、馬券だけ仲間と買うならその方が楽で面白いよ。
パドックと返し馬さえ全部見せててくれれば。
タレントや芸能人見たくて競馬中継見とる訳じゃないしね。
その辺も二極化した方が健全やろ。
混ぜるな危険や。
てなことを「つのちゃん」と話してたら…
作られた物語を押し売られとるまでは言わんが…
物語て各々が勝手に思い描くもんやろ?てなことに。
それぞれの人生があるから、それぞれの物語、投影するサラブレッドがいる訳で。
音楽や映画や本もそうだけど、コンテンツ?ての?
アレが立たんくなるやつ?テンツしか合ってない?
溢れすぎてて、簡単に触れすぎてダメなんやないかな?
旅をして出会う風景や味。
そんな肌触りのある体験が感動を生むんじゃないか?
俺も老害なんだろうけとさ、田舎で外資系のレコード屋なんて月一で行けるかどうかでさ。
山下達郎のサンデーソングブック聴いて、曲名メモって買いに行ったりさ。
あとさ、推しとかゆーてもさ、血統なんて一つも興味がないやろ?
競馬を、サラブレッドを推理と物語にするのは血統だろ?
競馬が他と違うのはエゲレス人のパクスブリタニア的な排他主義が醸し出した純血主義やない?
単純に速いエクウスを作るだけなら、それぞれの用途に対してもっと混血が進むやろ?
混血ゆーても近縁種やろうし。
F-1みたいに電気と内燃機関のハイブリッドにするとか、競艇みたいに悪けりゃ部品交換てなわけにはいかんやろ?
だいたいがわしらはダビスタ世代。
ゲームから入っとるのに血統に直面するっていう。
血統理論も多様性があったしね。
ちゃんと生産に使える理屈を捏ねてあった。
というか、もともと血統を語るてのは配合を語ることやろうしね。
名馬に規範を求め、いずれかを評価し再生産を試みる。
産業革命で起こった、科学での神への挑戦。
なによりもわしらの時代までは日本の血統に多様性があった。
今も構造としては変わらないのかもしれないが…
小岩井の基礎輸入牝馬じゃないけどさ、どの牧場にも基礎牝馬がいてさ…
過去を知るから未来が見えるし、過去がないのに現在も未来もないと思う。
馬券の話を少し。
なんかもうね、多点マルチ買いで高め狙いとか、3着に想定外の大穴が来て総流しに引っかかるとかいらん。
貧乏人には無理。
3連複4点で5,000倍以上から話聞く。
単勝なら1点、馬連なら軸一頭2点くらいからかな?
なんつーか、雑味が多過ぎて面白くない。
かといって競馬くらいの配当なら多点でも最低万券から狙いたい。
なんにせよ手が荒れるし、フォームは崩しやすい。
阿佐田哲也とか伊集院静が、競輪を一節で見て最終日か中日のどこかで勝負するみたいな話があった気がする。
初日から行って、ほとんど見して勝負は数レースみたいな。
競艇やりだしてからよくわかる気がする。
その節、そのシーズンを通しての推理。
競輪も競艇も年末のグランプリが盛り上がるはずだわ。
賞金額もあるのだろうけど、年末が1番の勝負。
ダービーやら天皇賞やらある競馬との違い。
競馬のグランプリはお祭り感はあるけどね。
本来ならクラシックの流れ、古馬戦線の流れがあるはずなんだけど、今は皆勤賞な馬は少ないし、それぞれの適性を求めて外国に行ったりするしね。
クラシックを勝つ馬も強いが、それと天皇賞も勝つ馬が強い。
もちろん、ここでの天皇賞というのは3,200メートルだ。
サラブレッドの血は世界に還流するべきなのだろうけど、物語は国内でひと段落して欲しい。
日本生産馬が国外調教で凱旋門賞とか勝っても嬉しいと思うよ。
でもさ、鞍上武豊のダービー馬が春天を勝ってヨーロッパ遠征!てかんじのが夢があるじゃん?
俺は老害で退場した方がええんやろな。
ほいでもそれがわしの競馬じゃけんね。
最後に多摩川の素敵なオジ様たちを紹介しよう。
競馬が終わって遊び足らず、ナイターを打ちに行った。
残業は成功するかと思われたが…
いくつか取ったが、高めが入らずマイナス。
最終をいくつか買ってレースを待っていた。
知り合いだか、今日出会ったばかりか幾人かが会話していた。
「俺はカァチャン食わせてもらってるから。」
「そうなの?いいねぇ。」
「自分の金は全部ギャンブルに使っちゃうからさ。」
「うちなんて年金だけで暮らしていけないよ。」
「そうだよな、1,000万円別にないとダメなんだろ?」
「退職金やら生命保険やらで1,000万円くらいはあるよ。死ぬまではなんとかなると思うけどさ。」
「まあ病気したり、なんで死ぬかわかんないし、いつまでかわかんないからな。」
「そうだよ。金なんて持ってたってしゃあねぇ。」
お互いに現実が過ぎったのか、目を逸らして離れていった。
良いなあ、大人だなぁ。
俺も生活保護やら年金生活で毎日競艇したいなあ…
住むとことご飯を作ってくれる嫁さんがおったらなあ…
自分の稼いだ金は酒と煙草と博打か…いいなあ…
他所に女だけ作らんにゃいけるんかなあ…
なんてことは、周りから真面目すぎると言われる俺は思わないが、否定したり軽蔑したりはしない。
どちらかというと親近感を覚える。
誰のどれが嘘で本当かなんてどうでもよいんだろうな。
競艇の場外にはたくさんの人生がある。
きれいなの、すすけたのと色とりどりの。
風呂に入ってないような体臭と煙草とアルコールの匂いが混ざる。
その中にいると病気になりそうだなと思う。
それでも競馬場よりは、息苦しさも生き苦しさもないのかもしれない。
競馬場はラッタッタなホリデー。
競艇場は今もブルースが流れる。
横浜がホンキートンクブルースなら…
多摩川はオイニーサイクーブルースか?
女が来るとこじゃねぇし、ガキには早いぜ!
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