ゲートが開き、好スタートの武豊とサトノシャイニングが出ていく。
北村友一とクロワデュノールも好スタートから行かせて切返し前につける。
少し意外だったのはルメールとショウヘイ。
こちらも好スタートから促して前を取った。
田辺とホウオウアートマンが武豊とサトノシャイニングを交わして先頭へ。
ペースがどうなるかと思ったが、単独2番手は武豊、レースが壊れることはないだろう。
この辺りで前目の決着になると思った。
1番意外だったのは…失礼な話だが北村友一の冷静さだ。
ダービーで1番人気を背負い、あんなに堂々と競馬ができる人間だとは思わなかった。
申し訳ないが彼のイメージは、茶髪で眉毛を整えすぎて細くなってる男。
人気商売で、なんらかのキャラ設定が必要なのかもしれない。
個人的には公営競技者、どの世界でも上に行く人間は身なりをちゃんとして欲しいと思う。
自分のことを棚に上げて何を言うかという話だけど。
ボートレーサーもそうだけど、仕事でレース場に入る際、スーツで来る人はちゃんとして見える。
先輩や師匠の教えもあるのだろうけど、技術以上に人間性を教えてる感じがして好感が持てる。
ただの個人的な偏見だとは思う。
世代的には、まだまだ躾が厳しく身体に教えられたというのもあるだろう。
若い人には、ある程度のところに行くまでは、身なりなどかまわず仕事に集中して欲しいとも思う。
そうでなければ、飯を食うていく技術や経験など身につくものではないと思う。
例えばだが、大谷翔平がすごいのは、飲みに行ったりする時間があるなら、練習してもっと野球が上手くなりたいというとこだろう。
彼のプレーもすごいが、後の世代に与える影響を考えると、ほんとうに素晴らしいと思う。
だって言えるもんね。
大谷翔平になりたければ、大谷翔平の真似しなさいって。
プレーは真似して良いけど、あんな人間になっちゃダメだよってことがない。
日本人はなんでも道に昇華する。
茶道、剣道、柔道…その道を歩いていくのには、技術だけでなく精神が伴ってないとならない。
肉体と精神は引き離せない。
だから肉体も精神も鍛え整えないと高みには至らない。
ダービーが終わり、帰宅してレースを見直し、インタビューを見た。
どうせ茶髪で眉毛剃りすぎてイキっとるんやろと。
画面に映されたのは、黒髪で眉毛も整えるくらい、ずっと愛馬を褒め称える姿だった。
本当に驚いた。
北村友一がちゃんとしてる…すごく好青年に見える。
「ダービージョッキーになれたことより、クロワデュノールがダービー馬になれたことがなにより嬉しい。僕ができるのは自分を信じること、馬を信じるという点だけです。今日はほんとうに馬と心中して、ずっと人馬一体になれたような気がして、余計なことをしなくても馬が全力で走ってくれました。もっともっと、このクロワデュノールという名前が世の中に知れ渡って欲しいです。」
素晴らしい。
ちゃんと考え、言葉を選んでる。
福永祐一がそうだったが、何かのきっかけをもらったのだからこれから。
これからどうなるかで、クロワデュノールの名前の響きは変わる。
ダービージョッキーになるのに品格がいらないのは周知の事実。
親からもらった身体にイタズラをしてみたり、金のまわりが悪いのか予想家になったり、後輩を脅すものもいる。
先達が一所懸命築こうとし、築き上げてきた競馬道。
汚さぬようにするには言動一致、人に見られて恥ずかしいことをしないようにするしかない。
ダービージョッキーに、クロワデュノールの鞍上に誇りを感じるなら、真似されるような人になって欲しい。
ダービージョッキーて立派な人だな、やっぱりダービージョッキーとなる人は立派なんだな。
人間ができてないと運と縁に恵まれることはないもんな。
やはり、正直に一所懸命やってる人のところに来るもんだな。
そうあって欲しいし、それで子供達に夢を与えられるのがスポーツの良いところだと思う。
思うというか、信じてる。
ダービーは編集長と見に行った。
本当のことを言うと、ボートレース多摩川の合間に見に行った。
ダービーだけ見に行くという俺に、昼ご飯一緒に食べようぜという編集長。
編集長の推し守谷美穂が出場ということもあって、折衷案でボートレース多摩川ランチとなった。
カツカレー美味い!女子戦の時の場内音楽「crazy magic」にフワフワフー!とかしながら、頃合いを見て東京競馬場へ移動。
繋がりにくい電波でアプリをピコピコすると、すでにダービーリボン配布終了。
ウオッカに会い、馬頭観音に全人馬の無事を祈り、馬券を買う。
少し時間が余ったので、競馬博物館へ。
今年はどんな歴史が刻まれるのか?
ここに展示されるような馬がいるのか?
ダービーに向けて心を整える良い時間となった。
4コーナーの丘に立つ。
指定席が取れない以上、ここが俺たちの場所。
G-ZEROの約束の地。
相変わらず周りは猿ばかり。
言葉は悪いが猿だろう。
国歌斉唱時も騒ぎ、誰も敬意を持ってないように見える。
編集長とダービーは祭、神事なのではないか?
祈り、信仰心を試されるのではないか?
そんなことを話していた。
乗馬クラブのような服を着た子供2人が目の前にいた。
間に合った、良かったなどと話し合ってる。
1人は興奮が抑えられないのか、騒ごう騒ごうとしてる。
どちらともなく思わず声が出た。
「静かに。」
俺と編集長は、確かドウデュースのダービー、アスクワイルドモアだったと思うが、歓声に入れ込み、素晴らしい馬体で出てきたのに…というのを見て、特にダービーだけはゲートが開くまでは静かに見守って欲しいと思うようになった。
騒ぎたいならライブに行けば良い。
俺たちも散々暴れてきた。
あそこなら人に迷惑をかけない程度に暴れても良いだろう。
俺たちの声が聞こえたのか、1人の子供が静かにだってともう1人の子に言った。
関係ないよ?みたいなことを言われて、もう一度静かにだって…と言って、それ以上は諦めたみたい。
いつかその意味がわかると良いなと思ってるとゲート入りが始まった。
レースが終わるとすぐに多摩川へ。
「モリ、モリ、モリヤー!」をしにいかなければならない。
結果は差されて2着で、NO守谷美穂だったが…
その後は焼鳥屋でSGボートレースオールスター。
素晴らしい熱戦が続き、最終日でエンジン相場が出来上がってるにもかかわらず、だからこそなのだろう、今節苦しんだ名手達が気を吐き、高配当連発となった。
そして迎えた優勝戦。
見事なスタートを決めて佐藤隆太郎のSG連続優勝となった。
前回もそうだが、節一といわれるエンジンを引いたのが大きかっただろうけど、それだけで勝てるわけではないだろう。
横にはマジックターン茅原悠紀、その横には競艇界で時代を築いた峰竜太がいたのだ。
展開のアヤ、運不運を乗り越えて、初めて到達できる場所。
あのクラスになると腕に差はないといっていいのだろう、レース後はみな出し切っての結果か、笑顔で讃えあう表彰式となった。
競馬も競艇も自分だけの力ではどうにもならない世界。
良い馬、良いエンジンに出会わなければことを成せない。
その出会いがあったからといって、ことを成せるわけではない。
腐らず焦らず、一歩一歩。
積み重ねなくして成長なし。
特に、怪我や不運を乗り越えるためには、それしかないようだ。
それがなぜ出来るか?
愛なんて言葉は使えないが、好きということだけだと思う。
そのことが好きで好きで、一所懸命に奮闘努力する。
そこに至ると結果は興味がなくなるのではないか?
どんな過程を自分が持てたか?
それだけになると、結果はついてくるのかなと。
男は結果を求めるな。
過程と家庭を大切にしろ。
そういうことなのかもしれない。
過程はともかく、家庭のない俺は…
やはり、硬ぇイチモツで一発ツモしかないな…
怪我を乗り越えてとか、よく知らんし、イージーに御涙頂戴の浪花節にする気はない。
俺の認識は間違っていた。
北村友一もクロワデュノールも強い。
ダービーに相応しいコンビだった。
北村友一はクロワデュノールをダービー馬にした。
クロワデュノールは北村友一を男にした。
大切なのはこれからだと思う。
ダービーですら1つのレースで通過点。
クロワデュノールが1番強いということを、見せ続けてくれ!