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種牡馬考察 アジアエクスプレス

今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、今年度に産駒がデビューする種牡馬の考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる産駒(優秀な配合という訳ではありません)をピックアップし、簡易考察をしてみたいと思います。

 

では、今回は、アジアエクスプレスです。

 

アジアエクスプレス(ヘニーヒューズ×ランニングボブキャッツ by Running Stag)牡・11生

有効世代数:10代目

 

Ⅰ 主:5 結:6 土:2 弱:2 影:3 集:4 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:1(主導牡牝を通じたクロス)

合計:(35+1/60)点 クラス:2B

Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□

Ⅲ 距離適性

芝:S □ M □ I △ C × L ×

ダ:S □ M □ I △ C × L ×

芝適性:□ ダート適性:□ 重馬場適性:□

Ⅳ 開花率:普通 成長型:遅め

 

〇 短評

 

主導はかなり不明瞭な配合で、Raise a Native5×6。次いで、Prince John5×6。更に、Bold Ruler6×6.Tom Fool6×6が続く。これらクロスの連動性があまり高く無い事や、血の集合も弱い事から、連合勢力とも言い難い。また、血統全体において米系が強い配合で、上記のクロス馬がそれらを纏めているものの、孤立したNearco.Hyperion等の欧州系をNorthern Dancerが結合をアシスト。また、Djebel-Tourbillonがスタミナの核を形成しているが、Teddyを通じ、主導たるRaise a Nativeと連動。その質の高いスタミナをしっかりと補給している。また、9代目までの判定においては、母内Ticino.Oranienに大きな欠陥を生じているが、当馬の場合10代目までが有効世代数であり、父内、Dark Ronald-Bay Ronaldがクロスし、Ticino内は弱点の派生を防ぎ、Oranienは弱点ですんでいる。また、それら10代目のクロスについて、広義の意味でBay Ronald系であるHyperionが弱い点が気になるが、同様に、Bay Ronald系であるTeddy系の強さから効力を発揮していると考えられる。生かされた、スピード・スタミナはなかなかに強靭で、スタミナは、Djebel.Somethingroyalがその核を形成。スピードは更に強靭で、Bold Ruler.Tom Fool.Bull Lea(Plucky Liegeの欠落でスピードタイプへと能力変換を起こしている)が、マイル前後向きのスピードを補給している。主導の不明瞭さ等、決して一流の配合とは言えないものの、なかなか理にかなった配合でもあると言える。本質は、芝・ダートともやや中途半端になりやすい、マイルタイプ。重馬場はこなす程度。

 

以上が、アジアエクスプレスの血統評価になります。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、まず上げていきましょう。

 

・スピード系

Raise a Native.Tom Fool.Bold Ruler-Nasrullah

 

・スタミナ系

Somethingroyal-Princequillo.Djebel-Tourbillon

 

・バランス系

Northern Dancer.Prince John(クロス内容によっては、スピードタイプとなり得る)

 

これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。

 

・まずは、明確な主導勢力を作る必要がある種牡馬だと言える血統構成だが、Raise a Nativeの系列クロスを主導としているものの、Mr.Prospectorを持っていない為、産駒においてその引き継ぎは難しいと言える。可能性があるとすれば、Affirmedの中間断絶を呼び水にする形態か。反面、Mr.Prospectorが無いという点で、Raise a Nativeのクロスを作成しやすいのは魅力的で、国内で浸透しているBold Ruler-Nasruullah.Tom Foolのスピードを引き出しやすい点は利点だと言える。

・Storm Cat-Storm Birdを自身のサイアーラインに持つため、これを有効活用したい。具体的には、Storm Bird-Northern Dancerを主導に据える形。また、自身の血統において強い影響を持つPrincequilloを生かす為Secretariatを主導にする事も有効。ただし、この場合においては、自身の血統内においてSecretariatが6代目に位置する為、明確な主導勢力となり得ない可能性が高く、Storm Cat外で、Secretariatのクロスを作成しつつ、Storm Catをクロスさせ、呼び水になる形態が望ましい。

・また、サンデーサイレンスの血を含まない血統であり、その意味でも配合の間口は広いとは言える。サンデーサイレンスを配する事により、Turn-to.Almahmoudのスピードを前面に押し出し、Northirdchanceのクロスにより米系を取りまとめる事ができるのも利点。ただし、自身はかなり世代の進んだ配合である為に、母の父にサンデーサイレンスを配すると、前述のクロスのうちTurn-to.Almahmoudが世代ズレを起こす為、そのスピード再現が不可能となり、有効とは言い難い点は留意しておきたい。更に言えば、自身はPrincquillo.Teddyが強い血統をしている為に、本質的な血の流れが異なり、あまりサンデーサイレンスを強調するのは避けたいところではある。具体的には、3代目に配するのがベターか。

・自身の、Princequillo系が強いのを逆手にとって、Speak Johnを主導とするのも面白い。ただし、この場合、土台構造が貧弱となりやすく、Nearco.Hyperionさえ主導と直接結合できない点は留意が必要で、Northern Dancerの結合アシストはほぼ必須だと言える。このような配合形態を考える際には、母の父として、ロージズインメイに一考の価値があると言える。

・自身は、前述の通り、Princwquillo(5連).Teddy(13連)が強い血統で、反面、現代の競走馬が豊富に持っている血は、Nearco(9連).Hyperion(6連)しか持たない。従って、かなり異色な血統であり、この部分を考慮して配合を行う必要がある。

 

このような種牡馬としての特徴を持つ、アジアエクスプレスですが、アトランダムな配合においては、前述の繁殖牝馬に求める条件で記述したように、かなり難しい部分を持つ種牡馬だと言えるでしょう。サンデーサイレンスフリー、Mr.Prospectorフリーである為に、配合の間口自体はかなり広い種牡馬ではありますが、5代以内に系列クロスを持たない、外交的な配合となりやすく、自身の世代が新しい点も踏まえると、父のイメージと反して、産駒の開花は全体的に遅くなりがちだと考えられます。また、主導候補と目される血をいくつかあげましたが、おそらくStorm Birdをクロスさせ、主導とするのが一番現実的であるとは言えますが、自身がStorm Catを持つため、ただStorm Catをクロスさせるだけでは、内部に中間断絶を豊富に抱えてしまうため、じり脚の傾向が強まると予測されます。ただし、ここまで米系で固めつつPrincequillo.Teddyが強い配合もまためずらしく、この部分を上手く使えれば、ダート向きではあるものの、かなりのスピードを引き出す事ができる可能性を秘めているとも言えます。産駒の大部分は、主にダートマイルを主戦場とし、スピードの引き出しやすさからアベレージこそ低くは無いものの、大物輩出がやや難しいと考えられる種牡馬だと言えるでしょうか。それでも、しっかりとした配合も少ないながらも見受けられました。こうした血統構成の種牡馬が連綿と血を繋ぐことは難しいかもしれませんが、是非活躍馬の輩出を望みたいと思います。

 

注目の産駒

 

・エアティアーモの18

主導は、Speak John4×6の系列クロス。次いで、Raise a Native6・8・8×5・6及びSir Gaylord7×6、主導内の生かし方は良く、Count Fleet-*-Sunreighのスピード。Tourbillonのスタミナ。Banish Fear-Blue Larkspurの米系を生かし、9代目ではあるもののTeddyをクロスさせる事に成功。この、主導内においては、たった一連存在するTeddyの存在により、Raise a Nativeと連動を果たしている。また、前述のRaise a NativeがMan o’Warをクロスさせ、War Admiral等を間接的に連動。また、結合のアシスト役として期待できるNorthern Dancerクロスが無いものの、Owen Tudor9×7がHyperion系とPharos系を統合し、非常に弱くあるがSir Gaylord内Nearcoを通じ、Hyperion.Nearcoを主導と連動できたのは幸い。ただし、全体の結合を考えると決して強いとは言えない点は指摘しておきたい。従って、完全開花を果たすのは難しいタイプだと言えるが、Princequillo系を生かした配合としては面白く、国内ではなかなか見られない個性派配合だと言える。本質は、ダート向きのマイルタイプ。

 

最後になりましたが、これがアジアエクスプレスの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

(taku.O)
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