今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、今年度に産駒がデビューする種牡馬の考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる産駒(優秀な配合という訳ではありません)をピックアップし、簡易考察をしてみたいと思います。
では、今回は、ラブリーデイです。
ラブリーデイ(キングカメハメハ×ポップコーンジャズ by ダンスインザダーク)牡・10生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:5 結:7 土:3 弱:2 影:2 集:3 質:3 再:3 SP:4 ST:4 特:1(主導牡牝を通じたクロス)
合計:(36+1/60)点 クラス:2B+(3B)
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C □ L ×
ダ:S △ M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め
〇 短評
主導は、Northern Dancerを伴う、Nijinsky6×4、次いで、Native Dancerを伴うRaise a Native6×4、Hornbeam6×5、Nashua5×7。従って、その父Northern Dancer5・5・7×5・6と血統の4ブロックに配し、Bull Lea-Bull Dog(=Sir Gallahad)-Teddy.Menow-Pharamond(=Sickle).Blue Larkspur.Man o’Warを傘下におさめている為に、本来であればかなりの明確さを持つNijinsky主導だが、前面でこれだけのクロスを併用したが為に、主導としての明確性は失われ、また血の集合も散漫になった点が、この配合の限界点だと言える。また、Princequillo系の結合が弱く、この部分にも不満が残る配合だと言える。反面、6代目までのクロスの連動性は比較的良好で、この部分がこの配合の強調点であり、当馬の能力の源泉であると言える。また、Graustarkのスタミナのアシストもあり、スピード・スタミナのバランスは良好で、本質的には芝向きの中距離タイプだと言える。また、ダートや重馬場もこなせる可能性を秘める。ただし、前述の血統の煩雑さと、61というクロス種の多さからから、開花率は低めで、成長にも時間がかかるタイプ。更に、好調期は長く続かないタイプだとも言えるだろうか。ただし、生かされたスピード・スタミナの良好さから、好調期には強い競馬を見せる可能性もまた、指摘しておきたい。
以上が、ラブリーデイの血統評価になります。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、まず上げていきましょう。
・スピード系
Raise a Native.Nasuha-Nasrullah.Almahmoud
・スタミナ系
Graustark.Nijinsky.Hornbeam
・バランス系
Northern Dancer
これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。
・自身の主導は、Nijinsky及びRaise a Nativeとなり、主導の明確性に欠けた配合だが、父の傾向を生かすなら、これらどちらかのクロスをさせない方が良い。
・ただし、上記の血は国内ではメジャーであり、主導が不明瞭になりやすい点を踏まえると、Raise a Nativeを進めて、Mr.Prospectorを主導とするのも一つの手ではある。ただし、この場合はMr.Prospectorの生かし方があまりよくない為、母方から米系を多く入れる必要がある。具体的には、Display.Count Fleet.Ajax等。
・Nijinskyを主導とする場合は、Mr.Prospector-Raise a Nativeをクロスさせない方向が望ましく、母の4~5代目程度(産駒の5~6代目)に配するのが望ましい。また、この形態を作る場合、ややスピードに欠ける可能性が高い為、ノーザンテーストクロスを作成する事も有効であるが、Nijinsky(産駒においては5代目)より後ろに位置させる事は必要。
・トライマイベスト(=El Gran Senor)やNureyevの母方の生かし方が良いのを利用し、トライマイベスト(=El Gran Senor)やNureyevを主導に据える事は有効。できるなら母方3~4代目(産駒において)ただし、この場合においてもRaise a Nativeのクロスは不要と言える。
・また、Nijinsky/Nureyv/トライマイベスト(=El Gran Senor)-Northern Dancerが主導を取るような配合を選択する場合、Nearctic/Natalmaのアシストがあれば、スピードにおいてプラスに傾く為、できるならば欲しい所である。具体的には、デインヒル.Icecapade.ノノアルコの血は相性が良い。
・また、ごく少数の話になるだろうが、トニービン内の生かし方が良いのを利用して、トニービンを呼び水にHornbeam主導という形も悪くは無い。ただし、この場合米系の離反が強くなりやすく、その部分のアシストを考える事は必要。
・全体的に欧米系が入り混じった配合であり、Hail to Reasonの結合アシストは必須と言える。ただし、自身Hail to Reasonが5・6代目にある為、産駒においては6・7代目に位置するが、この場合は結合のアシスト役としては弱くなる為、母の4代目程度にあるのが望ましい。
・欧米系の結合という意味においては、サンデーサイレンス-Haloをクロスさせる事も有用ではあるが、サンデーサイレンスをクロスさせた場合、近親度が高くなる可能性が高い為、Haloの単一クロスに留める事が無難ではある。また、リアルシャダイ-Robertoとクロスさせるのは、Nijinskyを主導にした場合において、スタミナのアシストや血の集合の観点から悪くは無いが、米系の結合アシストとしての役割を果たすのは難しい所は念頭においておきたい。
・スピードの補給として、Almahomud.Fair Trial.Menow等は継続させたい所。
・スタミナの補給として、Hornbeam.Graustark.Princequilloは継続させたい所だが、産駒における世代の後退を考えると、Key to The Mintクロスがもっとも有効か。また、Buckpasserも選択肢にはいると言える。
このような種牡馬としての特徴を持つ、ラブリーデイですが、アトランダムな配合においては、キングカメハメハ‐ダンスインザダーク-トニービン-リアルシャダイ-ノーザンテースト-ガーサントと累代を重ねた配合である為に、前面で不用意なクロスができやすく、主導の不明瞭さを招きやすい種牡馬だと言えるでしょう。おそらく、一番多い形態がMr.Prospectorが主導をとる状態が多いと考えられますが、この場合はダートを主戦場にする可能性が高いと考えられます。また、Mr.Prospectorが主導を取った場合は、Northern Dancerの産駒達であるNijinsky.Nureyv.トライマイベスト(=El Gran Senor).ノーザンテーストや、Roberto/Halo-Hail to Reasonのクロスも併存は可能でしょう。ただし、血の集合が不明瞭になる可能性を考えた際に、あまり多数のクロスを前面で作るのは好ましくない点は念頭においておきたい所でしょうか。また、父母が抱えるスピード系が産駒において世代が進むため、スピード要素に欠ける可能性が高く、Mr,Prospector-Raise a Nativeはその解消にはなるでしょう。反面、スタミナ要素に繋がる血を多く抱えた血統でありKey to The Mint-Graustark.Hornbeam.Princequillo.Mill Reef.Blakeney等のスタミナ要素の再現ができれば、ステイヤーの輩出も可能である種牡馬だと言えます。自身が煩雑かつ、メジャーな血を多数抱えた為に、シンプルさを第一に考える必要が、平均以上に高い種牡馬であり、勝ち上がりに苦労するタイプを輩出しがちな種牡馬だと言えるでしょうか。
注目の産駒
・ファッミリアの18
主導は、Mr.Prosector4×4の系列クロス。次いで、主導傘下のNashua。更に、Never Bend.Charlottesville.Mahmoudの系列クロスで血統の概要を構成。母父であるHolly Bullの世代がやや古い為に、Rough’n Tumble.Intentionalyが世代ズレを起こしているものの、その内部の血は生かされており、さほどのマイナスと取らなくても良い。更に、父方シャダイチャッター内において弱点を派生させているものの、9代目においてNasrullah.Nearco.Native Dancer.Hyperion.La Farinaとクロスさせた為、こちらもさほどのマイナスと取らなくても良い。また、母はこの世代においてもNorthern Dancer.Hail to Reasonを持たないという特殊な血統構成であるが、この為に血統全体が非常にシンプルな配合となった。こういった配合の場合、米系の結合はMr.Prospectorが司る為に問題は無いが、欧州系の配合が弱くなりがちである。しかしながら、当馬においては、Mahmoud.Owen Tudorを通じてHyperionを、Never Bendを通じてDjbel-Tourbillonを、Charlottesvilleを通じてPrincequilloを連動させる等、かなり面白い配合だと言える。また、Turn-toの切れ味を6代目で生かし、血の集合を母母Knight Prospectorに集合させ、この部分にも問題は無い。また、影響度バランスが(7-0-1-10)とかなり悪く見えるが、影響度0であるポップコーンジャズにおいて主導の父であるRaise a Nativeを7代目に配し、Prince Chebalier.Turn-to.Hyperionをクロスさせるなど、ポップコーンジャズ内において当馬に必要な血が配されている為、これもさほどのマイナスととらなくて良い。やや紙一重の部分がある配合ではあるものの、異端な配合形態として見るべき点が多い配合となっている。本質は、やや安定身に欠ける、ダートマイル~中距離タイプの配合であり、芝は難しいと考えられるが、それなりの重馬場適性を秘めているとも言える。
最後になりましたが、これがラブリーデイの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。
(taku.O)
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