「あたしのことは気にしないで。」
「でも…」
「あなたの枷にはなりたくない。」
「そうか…じゃあ行くね。」
「あたしの愛を確かめてきて…」
そんな、作り笑いが歪みそうな、長い月日が終わりそうな、グランブルーな夢から覚めた。
ん?そうか…今日は土曜、休みか…
癒えない疲れ、軽い二日酔い。
時計を見ると8時半、スマホにメッセージ。
「明日行くから。」
掃除しなきゃ…
だが身体は重く、二日酔いの靄の中、朝飯を食うのが精一杯。
とりあえず、もう一度布団に入ろう。
ピンポーン!
うとうとする暇もなかった。
そりゃそうだ、すぐに中央競馬が始まる時間だ。
よろよろと立ち上がり、編集長を迎え入れる。
「おいっすー!お疲れー!いやあ、まいったまいった…」
なぜリーダーはいかりや長介化するのか?
いったい何にまいっているのか?
疑問はたくさん浮かぶが…
しかし、元気なおっさんだなあ…
「ごめん、疲れてて掃除してないわ。」
「いや、そりゃしょうがねぇよ。俺も疲れててさ。」
編集長が買ってきたものを冷蔵庫へ。
「ビール飲むでしょ?」
「おう!」
グラスとビールを編集長へ。
「ありがと!」
んー、しゃあねぇ…俺も飲むか…
入金してないし、打つなら昼飯以降でよかろう。
「くー、2抜けかあ!うわぁ厚目にいっちゃったよ!」
「おし来た!」
「今日は勝たねぇと、晩に飲めないからな!気合入れていくぜ!」
「んー、今のが取れないと厳しいなあ…」
「やばい!入金しなきゃ無理か?」
「おかしいなあ…コパシーナぁー」
合いの手を入れながら、編集長劇場を迎え酒で楽しんでいた。
なんせ俺はまったく打ってない。
痛くも痒くもない。
「流れ悪そうだから、昼飯食うてからにしたら?」
「んだな。昼飯どうするよ?」
「んー、ここ最近はうち来て焼肉行ってから、編集長調子いいじゃない?でも、俺もあんま金持ってないしね…中華屋かカレー屋でええんじゃない?」
「俺もそれ考えてたのよ。でも、ここで大きく焼肉行っといてからじゃね?」
理論派の解析大好き人間だけれど、流れ論にものってくる編集長。
乳…νガンダムは伊達じゃない!
さすが全方位型博打打ちだ。
たかが昼焼肉1つ押し返せないで競馬に勝てるか!
そんな頼もしい姿勢、もちろん昼飯は焼肉となった。
食い放題の飲み放題。
その中で脂身がダメな編集長はハラミしか食わない。
俺は変化球で、豚トロや野菜、海老を皮を剥いて尽くす。
レモンサワーで流し込みながら、pirocksも相手によってはちゃんとやることはやるのだ。
ちゃんとちゃんとの味の素なのだ!
とにかく、上機嫌で打ってもらいたい。
結果はどうあれ…
が、編集長が悪いなら、俺が良いかもしれないし…
入金をすませ、挑む午後からの戦い。
まだだ…ここじゃない。
メインまではパドックでピンとこなければ見だ。
メイン、最終とワイドが引っかかり、端数が残った。
新聞なし、パドックの直感だけで半分戻ってくれば上等だろう…
編集長は?まだ戦えるみたいだ…
「よし。JRAから佐賀は買える。まだ今日の勝負は終わっちゃいない!」
「おう!いこうぜ!」
スマホをテレビに繋ぎ競馬続行!
「これ、◯番でいいんだよね?K理論的にはどう?」
「ああ、それでいいんじゃねぇかな?」
チーン、チーン。
あっという間に2レースが終わる鐘が鳴り響き、僕は悲しいふりもできないし、明日の資金もなくす。
寝よ。
編集長がなんか言ってるが、ふて寝を決め込む。
探し物などないし、見つからなくてもいいが、負けたら昼酒の酔いに任せて夢の中へ。
「寒い。」
編集長の声で目を覚ます。
「エアコンつけてんだけどね。ごめんね。」
「寒い、寒い。」
「俺、とりあえずシャワー浴びてくるわ。晩飯行くでしょ?」
うとうとしてる編集長をおいて、シャワーを浴びてコロンを叩いて…いや、コロンなどない。
コロン…コロナ禍だけれど…
ふー、あったまったあ…
さて、これからどうするかな…
ん?編集長起きてる…
佐賀競馬はまだ続いてる…
「いやあ、びっくりしたよ。」
「ん?なに?」
「起きたらさ、◯万に増えてんのよ。寝る前に仕込んだやつがさ。」
「え?まぢ?捲ったんじゃないの?」
「だから、佐賀のことは俺に聞けってゆっただろ?」
落語か!
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