自転車を漕ぎ出せばすぐに東府中で、坂を下り始めれば競馬場が見えるのに…
今週末はやたら競馬場が遠かった。
金曜の夜、スタイルと笑顔の良い女店長の焼鳥屋は満員御礼。
こんなとこでゴールデンウイークを感じるのか…
こっちは真面目に、まあ金がないだけだが…働いて、やっと辿り着いたオアシスは蜃気楼。
他を当たる気力もなく、コンビニ飯で家飲み沈没。
ボタンを掛け違えているわけではないが、少しずつ何かがズレてるような、それにすら気づかないような…
NHKマイルカップの指定席は取れていたので、土曜は家競馬。
今日でネット競馬口座は空になるだろうと思っていた。
2ヶ月くらいかな？
追加入金なしで過ごせたのは奇跡にちかい。
午前で打ち切ってランチから図書館。
そんな予定を立てていた。
何レースか間抜けがあった。
ただそれだけ。
なかなか買いたいレースもなく、前日発売も含め重賞を買って終了。
なんかおもしろくない。
悔しさもなく、たれ流しているだけ。
外れても外れても、あんなに楽しかったのに。
仲間と一喜一憂して、けして生活が楽になったりはしないし、豪遊できたりするわけじゃないのに、それでもとにかく楽しかったのに。
なぜ出会ったのか？
どうしても触れられずにいられなかった。
壊してしまうのに、壊れてしまうのに…
そんな出会いがある。
月曜、1冊の本と出会った。
村山由佳さんの「ダブルファンタジー」
なんでも出会うべき時があると思ってる。
この出会いもそうだと思う。
性描写がたくさんあったが、そこに生まれたこと、そのように生まれたこと、そういうふうに育てられたこと、そんなふうに生きられないこと。
今思えば、そんなことが書いてあったように思う。
その時は、また違う感触で、その感想をSNSに長々と垂れ流した。
そしたら、本人からコメントがあった。
「深い感想ありがとうございます。続編「ミルク・アンド・ハニー」もございます…」
「奈津のゆくえを見守って頂けると嬉しいです。」
続編は、図書館から借りてきてたのですぐ読んだ。
「なんというか、一つのことを伝えるために、この長い物語があった気がしました。」
それにまたコメントをくださった。
「彼女が一つのことを学ぶための長い旅に、お付き合いくださってありがとうございました。」
まさか作者とそんなやりとりができるなんて…
すごい時代になったものだ。
そんなことがあり、日々を過ごしていくなかで、伊集院静みたいに上手く書けるわけでもないのに、博打や競馬のことを書いている。
俺はいったいなにをしてるんだろう…
日曜の朝、ケンタッキーダービーを見届けた。
日本競馬にとって歴史的な敗戦。
一度だけやり直させてもらえるなら、第150回ケンタッキーダービーにフォーエバーヤングという名前が刻まれるのではないか？
一度はあっても二度はない、一生に一度のクラシック。
インディ500に佐藤琢磨の名前が永遠に刻まれたように、フォーエバーヤング、坂井瑠星、矢作芳人の名前が…
レース後、別々の場所でインタビューに答えていた師弟。
どちらも悲痛な表情で悔しさを口にし、あそこまでいったなら勝ちたかったと。
負けて悔しい。
簡単で当然のことのように思うが、それは案外難しいのではないか？
あそこまで悔しさを滲ませるのは、勝てるレースを落としたことではないか？
挑戦ではなく、獲りにいったからではないか？
堪えきれない悔しさは本気だから。
いつか、この師弟は忘れ物を取りに行くと思う。
そのまた弟子になるかもしれないが…
武豊、前人未到の4500勝まであと２つで迎えた日曜。
それだけでも、朝早くから目撃者になろうと、競馬場を目指すにはじゅうぶんすぎる理由だろう。
だが俺は読みかけの本を手放さなかった。
競馬場かどこかで少しリッチなランチもスルーして、インスタンラーメンを食べながら読み続けた。
朝、検討し直したNHKマイルカップの買い目は、すてにスマッピーに入力ずみ。
あとは競馬場へ行くだけなのに…今は遠い。
踏み切ってジャンプではないが、読み切って重い腰をあげたのは14時すぎだった。
競馬場に着くと、思ったよりパドックも空いてた。
パドックを見てからの買い足しを少し残し、あとはオールインしてその時を待った。
やはりG1のパドック。
どの馬も良く見える。
ここを目指してきたんだから当たり前なのだが、その当たり前に辿り着くのが難しい。
重賞予想ではジャンタルマンタルを切ったが、朝の検討では逆にアスコリピチェーノが怪しいんではないかと思った。
まともにやれば2頭なのだろうけど、競馬に絶対はない。
アスコリピチェーノも、ジャンタルマンタルも普通に良く見える。
なぜか目はノーブルロジャーで止まる。
ボンドガールが特に良く見えた。
フジビュースタンドから、うっすらではあるがその名の通り富士山が見えた。
向正面がスタートだから影響は少ないだろうが、あいかわらず煩い。
ライブハウスで乗ってもないのに、周りと同じ動きをするやつみたい。
音が鳴るとシンバルを叩く猿のおもちゃか？
ターフビジョンにはお静かにの文字。
猿に字は読めない。
スタートすれば、どれだけ騒いでも仕方ない。
命の次に大切な金を賭けているのだ。
ん？まさか1円も買わずになんてやつはいないよな？
賭ける金がなければ競馬場にいる意味なんてないだろ？
1着のジャンタルマンタルの川田将雅は、レース後のコメントで「マイルなら普通に走れば負けることはないと思っていた。」と語った。
実際そうだったのだろう。
もし？があるとすれば、ルメールとアスコリピチェーノだと決め打ったような締め。
レースの始まりから終わりまで、わずかな隙も見せなかった。
傲岸不遜までは言わないが、王様のような競馬。
何度やってもこの2頭で決まり、だいたいはジャンタルマンタルが前だろう。
2着アスコリピチェーノはルメールらしからぬ進路取り。
他馬に迷惑をかけ、その中でも厚めに買っていたボンドガールは大きな不利となった。
仕方ない。レーシングアクシデント。
3着に東京マイルで忘れてはならない男、戸崎圭太とロジリオン。
俺の勘の悪さ、流れの悪さは散々お世話になった戸崎圭太すら抜けにする。
ほんと、今は博打的には底。
競馬好きの上司も勧めていたのに…
ウイナーズサークルの前だったが、レースが終わるとすぐに帰路へ。
ゆっくり見れるのは今日が最後かと思い、ローズガーデンの方へ足を向けた。
色とりどりの薔薇をいくつか写真に。
自分が楽しむのもそうだが、花好きな母親へ送る。
そんな繰り返しで日々をやり過ごす。
今のところ、来週は馬券を買う気も、競馬場へ行く気もない。
走り回る子供達を若い母親が見つめる。
老夫婦は手を繋ぎ、あれやこれやと語り合う。
その中を1人歩いていく。
母親の言葉を思い出す。
「世の中、不必要な経験はないのよ。いつか今のこともね。」
ほんとうだろうか？
行く先もわからないのに。
過去はすべて置いてきたはずなのに。
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