最終レースブルース

最終レースブルース

結果的に4週、8日ノーヒットノーランの俺はともかく、「つのちゃん」もドツボってた週末だった。
こんな週末ばかりでは、佐野元春でなくとも「情けない週末」となる。

土曜は馬券を当てて能登へGO!のラストチャンスと思っていた。
金曜は台風関東上陸か?て噂、俺が現場に出ると本当になりそうだったので回避した。
ちなみに現場あるあるかもしれないが、作業をしてると雨が強くなり、雨支度をすると晴れる。
特に俺は顕著。
昔、台風の日に仕事だった。
仕事自体は少なく、午前と午後で一件ずつ。
さて、どんな段取りでいくか…
昼からがヤバいという予報だったので、伝票から想像できる楽勝そうな方を午後にまわした。
午前中を使って一件できれば、午後からは様子を見ながら止み間に仕上げれば…
当日、現場に着くまではそうでもなかったが、仕事を始めると雨が強くなってきた。
着替えはあるし、ずぶ濡れでも平気だ。
とはいえ、パンツまでぐっしょりだった。
何とか終わらせ現場を離れる。
午後からどうなることやらと一服。
次の現場に向かうと…雨が弱ってきた。
台風が早く通過したか?
いや、まだ油断は出来ない。
俺は台風の恐ろしさを知る西日本民だ。
すくわれるのは足元、溺れていいのはあの子にだけ!
2件目の現場に着くと雨はほぼ止んでいた。
今がチャンス!一気に攻めるぜと現場を確認すると…

「お客さん、これダメじゃ。」

「え?どうしてです?」

「この架台に収めるんじゃろ?」

「そうです。」

「入らんわ。」

「えっ!」

「今のは大きいけぇね…」

「どうなります?」

「機種変しかないね。」

「そうですか…わざわざ来てもらって申し訳ない。」

「いや、ええんすよ。報告上げときますね。」

「お願いします。」

何をどうしても入らん。
話をすませて外に出ると…空は鮮やかに晴れていた。
なんのために午前中にずぶ濡れになったんじゃ?
午後から2件いけば良かったんじゃ…
でも、1件は終わらせんと日銭にならんし…
いやだから、午後から2件…
午前中で台風が過ぎるんがわかっとりゃあのう…
とまあ、そんなかんじである。

金曜、俺が現場を回避したおかげで、台風もそれ気味。
東の江戸川競艇は前日に延期だったが、多摩川競艇はいつまで経っても発表がない。
まさか台風の日にやるのか?
競艇で1→2→3で決まると猪木なんていうが…
やれんのか?である。
やるんならランチにうどん食べに行くか…
雨も弱まってきたし外に出てみると、自転車にカッパはキツい雨だけど、傘はさせるくらいの風。
バス停の方を見ると…警備員が立ってる。
なら、明日の調整も含めて昼飯食いに行くか…

多摩川のうどんは美味しかった。
柔めというか、何時間茹でたらこんなにバラバラになるんかくらいやったけど、硬いうどんよりはぜんぜん好き。
出汁も俺と一緒で上品。
うまくなかったのは舟券だった。
風はあるし荒れるやろと思うたが…
高配当連発は良いのだが、コント55号か!と思うくらい、「なんでそうなるの!」連呼してた。
明日が本番の勝負なので、熱くなる前に帰ろうと最後に買ったレースは手広くいったが…
1→2→3で決まりだったのに、2マークで5がインに特攻かまして1→3→2で外れ。
1→2で総流しの俺の気持ちは…
その日はもちろんヤケ酒。
記憶は抜け落ちぎみ。
だからどうしたってんだ!

仕事、私事と流れが悪く、もう俺はここにいるべきじゃないくらいで迎えた土曜の朝。
台風一過の晴天。
勝負するに悪くない雰囲気。
ダメでもともと、気楽な一人旅。
何があっても己の責任。
やるだけやってみるさと、なぜか余裕。
競馬場のスタンドから真っ青な空。
馬券もレースも絞り、俺にしては珍しく午前中は2レースしかやらなかった。
別に打ち切らなくてもいいやと気楽に馬柱とパドックを見ていた。
競馬は明日もある。
俺に明日はないけど…なんて気分が良くなかったのか…
見事に間抜作…と言いたいとこだけど、この日は違った。
2-3-4着、3-4-5着連発。
2連系でも高目ならと思ったが、そうそうそんな穴馬はいないもの。
だけどわりと万券連発。
前日に難しそうだからと新聞をメイン以外捨てていた中京の予想が当たりまくる…

土曜の1番の狙いは最終にあった。
終戦記念日ウィーク、どこかでそんな馬券があってもいい。
新潟最終ピースヒロフェイス!
最終男、穴太郎こと野中悠太郎!
ピースヒロフェイスでピロもピースなフェイスだ!
だと思ったのだが…
その前の中京最終で事件は起こった。
坂井瑠星の馬がいいな…クリノハレルヤか名前も良いねぇ。
ん?永島まなみんはピースフルナイト?
こっちのピースだったりして?
13番人気だしないだろうなあ…
とか思っていたら…
1着セレッソデアモール7番人気、2着クリノハレルヤ5番人気、3着ピースフルナイト13番人気。
3連複は15万、3連単は83万。
ハレルヤとピースのワイドも万券。
今調べたら馬名もばっちり!
セレッソデアモールは愛の桜。
クリノハレルヤは冠名に讃える。
ピースフルナイトは平和な夜。
桜に囲まれた靖国。
靖国で会おうと散った英霊に感謝し讃える平和な夜。
これが競馬鎮魂歌である。
もちろん、新潟の穴太郎は散った。
先に咲かれちゃうとねぇ…
同じ穴なら、男の穴太郎より、まなみの…
それ以上はダメだ!
検閲が入って黒塗りになってしまう!
やっぱ井崎脩五郎先生にはなれないなと思った。

最終レースブルースはまだまだやまない。

日曜、俺は朝からなけなしの金を打っていた。
「つのちゃん」は、メインだけ仕込んでエアで遊んでた。
その「つのちゃん」がメインで叫んだ。
まずは新潟、そして札幌。

「ルメさん飛んだ!」

「川田3着もないんかーい!」

札幌は…

「◯◯の親父が外から内に潜り込んで…」

とかなんとか言ってたし、軸がそちらなら高目ツモだったのだが…

「川田飛ぶと思わんやん!」

まあそうだよね。
一頭抜けた存在だと思ってたもの。
プログノーシスはゲートもおかしかったし、あのペースでもどこからでも勝つと思ってたけど…
いろいろと難しい馬なんだろうね。

そして俺たち2人には最終レースが残された。
「つのちゃん」はボッケリーニの返還で残りHP700。
こちらは残りHP800だ。
ここから逆転はあるのか?
逆転に必要な条件は?
まずは当てることか?
中京は見し、残すは新潟と札幌。

「新潟はどうや?ええのおるか?」

「んー、野中悠太郎なんやろうけど、穴太郎が1番人気は買いにくいのう。」

「確かにそれかもなあ…」

「穴太郎が絡むと安いわ。無理!見!」

「んー。」

札幌のパドックがはじまる。

「豊、丹内、佐々木に…川田かな?人気やけど…」

「ほうか。」

「3連複じゃ逆転はないな。」

「他はええのおらんか?」

「んー、難しいねぇ。3着はわからんけど、この4頭で決まると思うが…」

「ほうか。」

「佐々木のは58キロやけど時計もあるな。あとは時計はそんな変わらんな。」

「55キロか持ち時計か?」

「丹内のがプラス2桁なんよ。時計はないが、これが成長分としたら…パワーアップして一気に時計を詰める3歳てことにならんやろか?」

「あるかもしれんなあ。」

「3連単のオッズは…んー、佐々木頭は買えん。」

その時、単勝オッズは佐々木→豊→川田→丹内だったと思う。
最終的に豊→川田→佐々木→古川→丹内だった。

「よし!俺は丹内を信じる。逆転があるとしたら55キロの3歳の中では1番未知数で人気がない!」

「なるほど。」

「丹内頭で…こうか?こうか?違うな…ギリ万券じゃ絞らな…こうか?こうなのか?ええんか?ええのんか?」

「なにをしよん!」

そんなこんなしてると新潟の最終が走ってた。
直線入って先頭は1番人気穴太郎!
逃げ切れるか?
戸崎先生が来てる!
うまぁーい!
お!変るか?変わった!
おー!穴太郎飛んだ!
デムーロに…吉田豊!

「これゆーて、たいしてつかんやろ?」

「いや、これはつくでぇ。」

「まぢ?戸崎にデムーロよ?吉田豊はわしも気になってたし…」

「野中飛べばつくよ。」

「リアリー?ん?3連複ギリ万じゃん!戸崎とデムーロと吉田豊て簡単じゃん!あれであんなつくんや…もうちぃと真剣に考えたら良かったかのう…」

「競馬は難しいね。」

そして最後の最後、本当の最終レース札幌12がはじまった。
ここからは俺の1人舞台。

「丹内下げた?そこでええんか?」

「佐々木か?58キロでも佐々木か?」

「豊先生上手やなあ…」

「川田も来てる。さすがや。」

直線に入り、佐々木→豊→川田の並びに。

「来い!丹内来い!お前がぶち抜いて完成や!」

「来れんか?来れんのんか?」

「いやぁぁぁぁ…丹内、足んない!」

丹内祐次は5着。
佐々木→豊→川田と入線。
3番人気→1番人気→2番人気で3連複は760円、3連単は4,770円。

「んー、やっぱ3連複じゃ逆転は無理やったな。つのちゃん当たった?」

「んとね…当たったけど…700円買って700円がわしの口座に入るな。」

「やったやん!60円プラや!」

「700円かあ…」

みなさん、お気付きだろうか?
丹内祐次を切れてれば、評価1番手は58キロ佐々木。
55キロの豊と川田は2番と13番。
同じくらいの力なら内の方が距離ロスが少ない。
そう考えると3連単1点で800円なら…文句なしで大捲り。
佐々木頭で2着3着を豊と川田テレコでも2点。
47倍と50倍だから…400円だと…傷は浅くすんだ。
しかしだ、佐々木→豊→丹内祐次だと70倍ある。
佐々木→川田→丹内は90倍だ。
丹内祐次3着だった時、俺は悶絶し天に召されてただろう。
これが最終のブルースだ。

堪えて堪えて稼ぎを拾い
堪えきれずに酒で流す
嫁子おらず楽しみもない

夢を見ては外れ
稼ぎは流れ
賽の河原で銭拾い

天に唾を吐くことも
生まれを呪うことも
もう忘れた
脳みそをアルコールで洗えば
シワはなくなり新品同様
愚かさ忘れてまた歩き出す

まだレースはある
逆転はある
ゴールを過ぎれば
最後のブルース
最後にブルース
最後までブルース
そんな最終のブルース

pirocks

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