西村淳也は何も覚えていない。

西村淳也は何も覚えていない。

この気持ちをどう表現すればいいのだろう…
いや、まずは勝者を讃えるべきだ。
凄かった、強かったルガル!
そして西村淳也、初G 1勝利おめでとう!

なんと言っていいかわからないけれど、戦前は香港馬の参戦もあり、過去に繰り広げられた死闘、名勝負がまた…なんて思ってた。
足を止め、息を止めての殴り合い。
最後まで立っていたものがチャンピオン。
そんなレースを描いていた。
レースが終わった瞬間、何かぽっかりと胸に穴が空いたような…
あまり見かけないような決まり方、同タイム首差とは思えないほど。
ただただ、ルガルの強さに圧倒されていた。

どう表現すればいいのか?
8月まで首位通過。
セ・リーグ優勝は間違いないだろうというところから、本拠地で優勝が決まり、目の前で相手の胴上げを見ることになったというか…
終わった後で考えれば、力の差はあったし、当たり前の結果だと思うのだけど…

パドックは、サトノレーヴが一番良く見えた。
ママコチャが次いで良く見えたが、他もG 1参戦してきたメンバー、どれも良い。
レーンと川田だ、どんな展開になってもなんとかするだろう。
仕込み馬券の他に買い足しながら助平心を出した。
最終、少しでも買いたいから、ワイドでママコチャとサトノレーヴ。
あー、サトノレーヴの単勝…複勝にすれば良かったかな?
ガミっても当たったて言いたいしな。
秋の1発目やしな…なんて呑気な俺は、なんという愚か者なのだろう。
マッチでぇーす!なんておどけてみても、誰も慰めてはくれないだろう…

ゲートが開く。
外がスタートはいい。
ビクターザウィナーか?
お!やはり横山典弘とピューロマジック!
速いな…
モレイラはどこに収める?
ん?なんだその内のは?
同じ帽子色…ルガル…ルガル?
サトノレーヴはどこ?
思えばここで全てが決まった。

ピューロマジックは速い。
無理もなく差を広げていき、ハイペースに場内はどよめく。
ウイングレイテストと松岡も決めてついていく。
調教で何かあったらしいが…覚悟を見せる。
ママコチャは?川田は?
中段の前?
サトノレーヴは?レーンは?
その後ろ…ん?トウシンマカオがすぐ内?
え?そんなとこで追走できるの?
ナムラクレアはそれより後ろ。
これは最後に爆発するか?
豊とオオバンブルマイはさらに後ろ。
これはさすがに無理だろう…

それよりなにより縦長で内ぽっかり…
まぢか…まったく想定外だ…
この日の中山は外回しの差しは…
捲りも不発。
力が同じくらいなら、内目前目が有利。
よほどのハイペースにならなければ当たり前か…
詰まらなければ距離ロスのない方がね。
スプリンターズSは、外の前目の馬がモレイラ、レーンで、内の前目は川田将雅。
内枠の差し馬、若手ジョッキーは外を回ることになると見てた。
ピューロマジックが速いったって、レーン、モレイラ、川田がその後ろでやり合う。
内は簡単には開かないだろうと。
もちろん、人気馬に乗った彼らは前に届く位置で競馬をするだろう。
実際に、ママコチャ川田4着、ビクターザウィナーとモレイラは6着、サトノレーヴとレーンは7着で、8着のピューロマジックより前でゴールした。

ルガルの強さ、西村淳也の気合いと根性が抜けて見えるが、タイム差なし首差のトウシンマカオと菅原明良、そこから0.1差のナムラクレア代打横山武史も素晴らしい。
2人と2頭の差は枠かな?

レース後、横山武史は…
「ペースは速くなると思ってた。先行したい馬もたくさんいた。ポジション争いは厳しくなると思ってた。そこを取りきれなかった。理想はトウシンマカオのとこ。勝負所は内がごちゃつくなら、スムーズさで外を選んだ。内容はかなり良かった。残念なのは結果だけ。」

菅原明良は…
「状態はすごく良かった。流れが速く、ポジションは良かったと思ったが、前の馬を交わせなかったので…追ってからすごく良い反応。悔しいです。」
宝塚記念は勝ちきったが、大阪杯ではタイム差なしの3着。
何かもう一つ上手くいっていれば…
人馬ともに全てを出し切ってるように思うが、G1の壁とはこうも高いものか?
だからこそ価値があるのだけれど…
あるプロ野球チームの選手が目の前で胴上げを見て、それからバッティング練習をしていたという。
何かできなかったか?何が足らないか?
その答えを練習の中に探したのだろう。
菅原明良騎手もきっと、何度も何度もレースを見直し、今以上の何かを探したのではないかな?
悔しいですと口に出すのは簡単だが、それを晴らすのは難しい。
険しい道だが、自分でしか答えが出せない。
レースの経験が馬を進化させるなら、人もまたそうだろう。
何度も練習はできるが、本番は一度しかない。
そこで何ができるかだけが答えであり、お金をいただくプロフェッショナルということだろう。

ついでにおもだったところのレース後コメントを簡単に。

4着ママコチャ川田
「とても具合良く、全力を出してくれ、この馬としては良い走りができた。」

5着ウインマーベル松山弘平
「スタート良く1,200メートルに対応してくれた。理想は1,400かなというところはあるが、これだけがんばってくれたし、力はある。」

6着ビクターザウィナー、モレイラ
「ベストは尽くした。終始緩い馬場を気にしてた。前の馬のはねかえりを避けるために進路を外に取ったのも影響した。」
シャム調教師
「ペースが速かった。モレイラも最善。結果は妥当。失望なし。」

7着サトノレーヴ、レーン
「いつもよりスタート速く決められず、理想的なポジションより後ろ。後ろにいたから勝つのは難しかった。理想的な展開にならず残念。」

8着ピューロマジック横山典弘
「頑張っている。」

横山典弘の様式美。
これはもう古典芸能だな。
ピューロマジックがこのままの競馬で強くなれば、スプリント路線はすごく面白くなると思う。
オーバーペースかどうかはわからないが、8着とはいえ勝馬から0.5秒差。
息子たちだけでなく、若手すべてへのメッセージだったか?
見ていた俺は「モレイラ頑張っている。」だった。

ここまで書いてきて思ったが、サトノレーヴがスタート出たなら、もっと激しい熱いレースになっていたのではないか?
勝馬は変わらなかったと思うが、もっとグチャグチャで誰が来るかわからないレースになっていたのでは?
サラブレッドという生き物を使ったレースである以上、コンディションがどうかはすごく難しいのだけど…
これもレース、競争というのは何が起きるかわからないし、有利が不利に、不利が有利になるもの。
だからこそ賭ける価値があるのだと思うけど。

最後にゴール後に感極まったように見え、ここに至るのにどれだけのことがあったのかと、ファンをあたたかな気持ちにさせた西村淳也のコメントを。

「本当に騎手を続けてきて良かった。調教師、厩舎スタッフ、関係者には一所懸命馬を作っていただいたし、高松宮記念で悔しい思いをしていたので良かったです。陣営には高松宮記念では迷惑をかけたが、スプリンターズSで騎乗依頼をもらえてよかった。競馬のことは何一つ覚えてません。すいません。女手一つで育ててくれた母に感謝。騎手になってからたくさんの人に支えられてきた、馬にもたくさん迷惑かけた、感謝する人はいっぱいいる。ルガルはG1を勝ったことないジョッキーを、G1ジョッキーにしてくれました。まだまだ目標はあるし、頑張っていきたい。」

競馬のことは何一つ覚えてません。
大丈夫。
俺たち、みんなが覚えてる。
それでいいのだ。

pirocks

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