今回の血統研究所は、繁殖牝馬考察と銘うって、繁殖牝馬の考察を行いたいと思います。まず、繁殖牝馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる仮想配合(優秀な配合という訳ではありません)をピックアップし、簡易考察をしてみたいと思います。
では、今回は、アーモンドアイです。
アーモンドアイ(ロードカナロア×フサイチパンドラ by サンデーサイレンス)牝・2015生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:7 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:早め
〇 短評
主導は、Northern Dancerを伴うNureyev5×3。次いで、Almahmoud.Menow-Pharamond(=Sickle)。これらクロスは主導内に存在し、そのスピードを明確に補給し、この部分が当馬のスピードの源泉だと言える。また、7代目以降に存在するクロスである、Alibahi.Native Dancer.Nasrullah.Khaledも直接結合を果たし、その短~中距離向きのスピード・スタミナを補給し、米系であるDiscoveryも前述のNative Dancerを経由して主導と連動している。惜しむらくは、Man o’ War.Blue Larkspur.Bull Dogの結合が果たされていない点で、3代目から主導勢力を形成した配合としては、致命的な部分であると言える。更に、Sex Appeal.Turn-toの世代ズレも抱え、この部分も当馬の血統構成上の限界点を、端的に示している(仮に、この両者が効果を発揮していたとすれば、スピード・スタミナに1点ずつ加点を加えても良いレベルではある。ではあるが、配合当初の紙面上の考察としては、この評価が妥当であり、配点はそのままとしたい)。反面、強調された母の母ロッタレースへの血の集合は、非常に強力で、前面で強い影響を示したクロスの全てを集合させており、Sex Appeal自身は世代ズレを起こしているものの、その内部の血がしっかり生きている点も踏まえると、ここまで、血のバランスと集合を高い次元で作成できる配合は稀で、土台構造を構成するNearco.Hyperionからの、主導への血の流れもかなり良好。バランスの悪さを考えると、常に安定して強い競馬を見せるタイプでは無く、成長力にも疑問が残るタイプではあるものの、きっちり仕上がった際には破壊力のある競馬を見せる可能性を秘める。本質は芝向きのマイルタイプだが、7代目以降の血の生かし方や、完璧な再現度とは言えないものの、母系の血の質の高さを踏まえると、距離適性の幅は、ある程度広いタイプに育つ可能性は否定できない。
以上が、アーモンドアイの血統評価になります。これが繁殖牝馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、まず上げていきましょう。
・スピード系
Nureyev.Almahmoud.Menow-Pharamond(=Sickle)
・スタミナ系
Alibhai
・バランス系
Northern Dancer
これらを踏まえて、種牡馬側に求める条件を考えてみたいと思います。
・自身は、バランスの悪さを抱えながら、Northern Dancerを伴うNureyev5×3を主導に、圧倒的に母の母であるロッタレースを強調した配合だが、このバランスの悪さを補正する必要がある。
・また、自身の主導となったNureyevを3代目でクロスさせている点を踏まえても、主導候補はNureyevがベターだと言える。
・米系の生かし方は悪く無いものの、その連動性に不備があった為、その解消を目指したい所。具体的にはHail to Reason.Buckpasser.Mr.Prospectorのクロスが有効だと考えられる。
・スタミナの確保の為に、自身のスタミナの核となったAlibhaiを再度利用したい所だが、産駒においては世代が一代進むため、その部分のケアは必要。具体的には、Alibhaiを内包したGraustark(=His Majesty)や、Buckpasserを生かしスタミナの核としたい。
・スピードの確保は比較的容易な血統構成をしており、自身の主導となったGold Bridgeを生かしたNureyevや、自身では眠ったままのMr.Prospectorを利用したい。
このような繁殖牝馬としての特徴を持つ、アーモンドアイですが、アトランダムな配合においては、サンデーサイレンスを呼び水とした、Hail to Reason主導の配合や、Mr.Prospector.Northern Dancerの中間断絶が強い影響を持った産駒を輩出する可能性が考えられ、母の見せた圧倒的なスピードが鳴りを潜める可能性が高い繁殖牝馬だと言えます。また、世界的にもややマイナーとなったNureyevを中心に据えた配合である点も、難しい部分であり、母の再現度が低くなりがちな繁殖牝馬だと言えるでしょう。そこで、おそらく実現の可能性はあり得ないと思いますが、こうした配合なら、というものを考えてみましたので、ご閲覧頂ければ幸いに思います。
仮想配合
(Siyouni×アーモンドアイ by ロードカナロア)-・-生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:9 結:7 土:3 弱:1 影:2 集:4 質:5 再:6 SP:4 ST:4 特:1(主導牡牝を通じたクロス)
合計:(45+1/60)点 クラス:1A+
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I ◎ C □ L ×
ダ:S × M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:早め
〇 短評
主導は父母の傾向を引き継ぎ、Northern Dancer-Nearctic/Natalmaと継続させ、Mieuxce.Hyperion.Nasrullahを生かした、Nureyev4×4・6の系列クロス。その父Northern Dancerを、5・5×5・6・7・7と血統の4ブロック全てに配し、非常に明確に血統をリードしている。次いで、Buckpasser6×5・8の系列クロスで血統を構成。また、母のスタミナ源であったAlibhaiを生かした、Graustark(=His Majesty)5×6が、Buckpasserと並んでスタミナの核を形成。母を上回るスタミナを確保する事に成功している。更に、Turn-toの中間断絶を7・8×6・9とクロスさせ、世代ズレを補正しながら、その切れ味の確保に成功している点は見るべき部分である。加えて、Nureyevを主導とした際に弱くなりがちな米系の連動性を、Buckpasserがとりまとめ、Mr.Prospector内Sir Gallahad(=Bull Dog)-Teddyを軸に、Native Dancerを介し主導と連動させた点は見るべき部分であり、当馬の能力形成にしっかりと寄与している。更に孤立しがちなPrincequillo系をCharlottesbille6×8の系列クロス内、Nearcoを介し主導と連動させた点は、瞠目に値する。惜しむらくは、7代目以降において、きめ細かく生かしたDjebel.Spy Song等の欧米系の連動が図られていない点や、主導内Gold Bridgeの落失。9代目Northern Dancer、8代目Graustarkの世代ズレや、軽微ではあるものの父の母内Pas de Nomにおいて弱点を派生させた点で、影響度バランスが(8-12-5-12)となった点から解るように、血の集合がやや曖昧で、安定感に欠ける可能性がある点か。とは言うものの、明確な主導に父母の抱えるスピード・スタミナ要素を十全に生かし、質の高い迫力ある血統構成となっている。本質は、芝向きのマイル~中距離タイプで、ダート・重馬場はこなせる程度。父は欧州所属の為、おそらく叶わない組み合わせではあるものの、なかなか優秀な内容となっているのではないだろうか。
最後になりましたが、これがアーモンドアイの、繁殖牝馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。
(taku.O)
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