閲覧者の皆様こんにちは。今回の血統研究所は、私的名馬選と銘打って、個人的に面白い配合だと思える名馬達を、成績にとらわれず、皆様に紹介をしていきたいと思います。
では、今回は、稀代の名牝、ウオッカです。
ウオッカ(タニノギムレット×タニノシスター by ルション)牝・04生
有効世代数:10代目
Ⅰ 主:7 結:7 土:3 弱:3 影:2 集:5 質:4 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M ◎ I 〇 C □ L ×
ダ:S × M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め
〇短評
主導はNashua5×6~Nasrullah6・7×5・6・7の系列クロス。次いで、Roman6・6×6。Alibahi6・7×6。この三者が、ウオッカのスピード・スタミナの核として機能している。似た配合馬としてナリタタイシン(3A 主導はNearco、Roman、Alibahi)が存在するが、ナリタタイシンほどに血の集合や連動がはかられておらず、その部分ではやや劣るものの、ウオッカの血統において有効に作用しているのは事実であり、主導としては明確な部類に入るだろう。また、前述のクロスの結合や6代目までに生じたクロスは、やや間接的な結合に頼る部分が大きく、Blue Larkspur.Man’ o War.Prince Rose.Hurry Onの結合は、有効世代数10代目ギリギリになった点が、惜しまれる部分であるものの、前面のAibhai等のスタミナを強化し、ウオッカの能力形成に役立っている。また、代々母系に重ねてきた血の質の高さはかなりのレベルで、クロスした血の質も高く、本当の意味で底力勝負可能な血統構成だと言える。これらは血統の奥深くに眠っている部分の為、本当の意味での開花には時間がかかるタイプであるとは言えるが、仮に完全開花した場合、安定して強さを発揮できる内容であり、ややスピード優位の血統構成である為に、12Fがギリギリであるが、マイル~中距離戦においてハイペース対応も十分に可能な名配合だと言える。
以上が、2007年に行われた東京優駿を牝馬として64年ぶりに制した、稀代の名牝ウオッカに対する血統面からの考察であります。当馬の血統構成を考えた時に、まず目につくのがNashua~Nasrullahのクロスからくる、主導の明確性だと思いますが、当馬の血統において、真に大きな役割を果たしたのはRomanのスピード、Alibahi~Hyperionのスタミナのアシストが、しっかりと明確に機能した事実であると考えます。また、父タニノギムレットが抱えた、Hail to Reason内の米系が、母内ルション・トウショウボーイと連動した事により、生かされた点も指摘しておかなくてはいけない部分だと考えます。本来配合とは、父母両者の血を外交的に抱え、かつ集合させ、特定の部分の生かし方が良い物を目指すのが本道だと考えていますが、ウオッカの血統構成はまさにこれにかなった内容で、サンデーサイレンスやNorthern Dancerに頼る事なく、全てを組み立てる事に成功した、とても美しくある血統だと言えるでしょう。過去の名馬達にも当てはまりますが、本当に強い競馬を、古馬になっても安定して見せるサラブレッドの血統は美しいものが多く、ウオッカの血統構成は名馬のそれだと言って差し支え無いでしょう。
昨年残念ながら、15歳という短い生涯を終えたウオッカですが、幸いな事にタニノフランケルや、タニノミッション等の、優れた配合馬を送り出しています。両馬ともいまだ大きな勲章を得てはいませんが、晩成傾向のある血統構成で、今後の更なる活躍を期待するものです。
また、引退後すぐ欧州にわたったウオッカですが、仮に国内に残った場合、おそらくサンデーサイレンスの血を入れる配合を試されたと思いますが、もしディープインパクトを配した場合、致命的に悪いとは言わないまでも、母が持つ血の流れが生きた内容では無い事を指摘しておきたいと思います。もし、許されるならば個人的には以下の配合が見てみたいと考えていました(また、別の方が考えた配合ですがベーカバドとの交配なら、欧州で通用するような1A級の中距離タイプが出せたと思います)。
(セイウンスカイ×ウオッカ by タニノギムレット)-・-生
有効世代数:10代目
Ⅰ 主:8 結:7 土:4 弱:3 影:3 集:5 質:3 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(45/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I ◎ C 〇 L △
ダ:S × M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:低い 成長型:遅め
主導はNever Bend5×5の系列クロス。次いで、Gray Sovereign、Hyperion。前者の結合は血統全体で10連ある父Nasrullahで強固に連動し、後者はその仔Owen Tudor内Pharosを通じて連動している。この両者のスピード・スタミナを軸に、主導内Djebel~Tourbillon、Blue Larkspurを生かし、重厚な血統を作り上げている。更に、本来結合しにくい、Princequillo系も、サイアーライン上のForliや父母内に存在するRibotと連動した為にPapyrus~Traceryとクロスしそのスタミナの裏付けをより強固にした上で、Ribot内Pharosや、10代目Gay Crusaderを通じ、その中距離向きのスタミナを強固に補給している。この部分においては、本来マイル~中距離タイプであった父母よりも強靭で、ステイヤーでは無いものの距離適性の幅は広いタイプだと言える。惜しむらくはRaise a Nativeの結合が10代目Teddyによってかろうじて結合している点だが、Pharos(=Fairway)26連から来る土台構造の堅牢さや血の流れの良さから見て、安定感ある血統構成。
父は残念ながら、2008年に種牡馬を引退した為、仮にウオッカが国内で繋養された場合においても、決して見る事が叶わなかった血統ですが、Northern Dancerを一滴含むものの、サンデーサイレンスに頼らない血統を、あえてウオッカの仔で見たいという個人的な願望で考えたものです。
また、私の友人で、ウオッカを天馬トウショウボーイだと評した方がいらっしゃいましたが、ウオッカ内のトウショウボーイの生かし方は素晴らしく、まさに言いえて妙だと感じたものです。この配合でもトウショウボーイはその役割をしっかりと果たしています。
稀代の名牝ウオッカに捧げる文章として、駄文なのは重々承知の上で書き上げました。あの時の東京優駿は私の競馬観を粉々に砕いて、美しく再構成してくれました。そして、貴女が先頭で駆け抜けた日本競馬の頂点を決める日が、またやってきました。今年は、どんな競馬が繰り広げられるでしょうか。偉大なる名馬ウオッカよ安らかに。そして、全馬の無事をどうか見守っていてください。
(taku.O)
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