今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、これから産駒がデビューする種牡馬の考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる産駒(優秀な配合という訳ではありません)をピックアップし、簡易考察をしてみたいと思います。
距離適性は、ミオスタチン遺伝子をC/T型と想定して算出しております。当該のサラブレッドのミオスタチン遺伝子が、C/C型であれば一項目左へ、T/T型であれば一項目右へずらして、ご閲覧頂ければ幸いに思います。
では、今回は、アメリカンファラオです。
アメリカンファラオ(Pioneerof the Nile×Littleprincessemma by Yankee Gentleman)牡・12生
有効世代数:10代目
Ⅰ 主:7 結:7 土:1 弱:2 影:3 集:5 質:4 再:6 SP:4 ST:4 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I □ C □ L ×
ダ:S × M 〇 I ◎ C 〇 L ×
芝適性:□ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:普通 成長型:遅め
〇 短評
主導は、Nasrullah-Nearcoと継続させたBold Ruler5・7×6・6の系列クロス。血統の4ブロック全てに配され、一見かなり明確に見えるが、Raise a Native6×5の系列クロスや、Northern Dancer5×5の中間断絶の影響もあり、極めて明確にとはいかなかった点が惜しまれる。次いで、Olympia6×6・6・7、Tom Fool7・8×6の系列クロスや、Prince Roseを伴うPrincequillo6・8×7・8で血統を構成。米系が強い血統構成でありながらHyperion直系のOlympia6×6・7・7が明確にスタミナの核を形成し、7代目となるがAlibhai7・8×8・8の系列クロスや、Swaps7×7の中間断絶など、9代目までに17連存在し、多数派を形成したHyperionの生かし方が非常に良好で、その流れをNorthern Dancerを介し主導勢力と連動させた点は見るべき部分であり、当馬の能力の源泉。ただし、この血の流れを主導であるBold Rulerが汲んでいない点は明らかにマイナスであり、当馬の血統構成上の限界点もここにあると言える。とは言うものの、有効世代数が10代目となった為、これといった弱点の派生も無く、影響度バランスも(3-7-3-6)と安定感のある血統構成。本質は、ダート向きの中距離タイプで、芝は慣れればこなせる程度だが、重馬場は得意。きめ細かく生かしたTourbillon-Ksarの離反は惜しまれるが、PrincequilloがRibot内Papyrusを介し主導と連動した点は見るべき部分であり、前述のHyperion系のスタミナ要素も踏まえると、開花した際には長く脚を使える可能性を指摘しておきたい。9代目までにクロス種が58とかなり多く、晩成とまでは言えないが、じっくりと成長するタイプである。無事な開花を望みたい一頭。
以上が、アメリカンファラオの血統評価となります。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、上げてみましょう。
・スピード系
Bold Ruler.Raise a Native.Tom Fool
・スタミナ系
Princequillo.Olympia
・バランス系
Northern Dancer
これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。
・自身は、Bold Rulerを主導とした血統構成だが、スピード維持の為にもこの継続は狙いたい。具体的にはSecretariat. Key to the Kingdomだが、これらクロスは孤立しがちなPrincequilloを内包し、クロスさせる事により全体の連動性にも寄与すると考えられる。
・また、同様に影響の強かったRaise a Nativeの継続をはかり、そのスピードを有効活用したい。具体的にはMr.Prospector. Exclusive Nativeクロスの作成。
・ただし、Key to the Kingdom.Exclusive Nativeは産駒において5代目に位置するため、主導の明瞭性を乱す可能性が存在し、どの血を生かすかの取捨選択を考えたい。
・自身5代目までにクロスしやすい血はMr.Prospector.Secretariat.Northern Dancerだが、産駒の血統内においてMr.Prospector.Secretariatが6代目に位置することになり、アトランダムな配合では主導の明瞭性を出すのに苦労すると考えられる。その為、母の血統構成に頼りがちな種牡馬ではあり、母方を強くだす種牡馬だと言える。
・また、スタミナの確保の為に、自身では眠っているBuckpasserの活用を考えたい。
・前述のように、自身の血統構成はHyperionの血が強く、この血を上手く生かすと共に、次いで強いTeddy系を上手く生かしながら、自身には弱いNearcoの血を上手く取り込む必要がある。その意味では、これらの血がバランスよく含まれている日本の繁殖牝馬プールの抱える血は、当馬にとってプラスだと言える。
・これらを踏まえると、Mr.Prospector6×4の系列クロスを主導に、Northern Dancerを伴いBuckpasserを生かした、El Gran Senor(=トライマイベスト)5×5により欧米系の血の連動を図れ、この両者を母の父内で配置できるキングカメハメハ産駒とは相性が比較的良好であると言える。
このような種牡馬としての特徴を持つ、アメリカンファラオですが、アトランダムな配合においては、Mr.Prospector.Northern Dancerが並列し、やや主導が不明瞭な血統構成となる可能性が高いが、Mr.Prospector.Secretariatをクロスさせると自動で系列クロスを形成し、ダート向きにはなりやすいものの、スピード・スタミナに良さを持つ産駒を期待できます。カフェファラオ(1A+)、ルクソールカフェ(1A+)の全兄弟をはじめとして、ダノンファラオ(3B+(1A))といった産駒がいますが、具体的にはカフェファラオ・ルクソールカフェ兄弟のような血統構成が望ましいと言えるでしょうか。
国内においては、26年度一年の供用となる為、まだ実際の産駒は誕生しておりませんが、こうした配合なら、という仮想配合を考えてみましたので、皆様の参考になれば幸いであります。
(アメリカンファラオ×レッツゴードンキ by キングカメハメハ)-・-生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:1 影:2 集:6 質:4 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(44/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I ◎ C 〇 L ×
ダ:S × M 〇 I ◎ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:普通 成長型:遅め
〇 短評
主導は、父の傾向を引き継ぎMr.Prospector6×4・5の系列クロス。Mr.Prospectorが存在しない父の母内においても、6代目に父であるRaise a Nativeを配し、明確に血統全体をリードしている。次いで、Northern Dancerを伴いBuckpasserの系列クロスを内包するEl Gran Senor5×5や、Chieftain6×7の系列クロス、In Reality6・7×7のほぼ単一クロスで血統を構成。父と母の父の相性の良さを上手く生かし、父の母内Olympia-Heliopolisは落失するものの、9代目までにHyperionを17連抱え、血の流れは崩れていない。また、父に弱いNearcoを補正し、全体で19連と多数派を形成しており、その意味では配合の方向性はあっていると言える。また、孤立しがちなPrincequilloを、Chieftainを介し主導と連動させ、能力形成に寄与させた点は見るべき部分である。この組み合わせは、主導の明確性、連動性に良さが出るだけでなく、母の父キングカメハメハ内Pilot BirdにおいてTudor Minstrel.Prince Chevalie-Prince Rose.Spy Song.Bull Page.Djbel-Tourbillonと生かし、その質の高い血を存分に再現できる為、その意味でも両者の相性は良好。本質は、芝・ダート兼用の中距離タイプで、重馬場もこなす全天候型。距離適性に幅は広いタイプ。クロス種が9代目までに59と多く、開花まで時間がかかるタイプと想定されるが、底力勝負が見込める血統構成。無事な開花を望みたい一頭。
最後になりましたが、これがアメリカンファラオの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。
(taku.O)
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