今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、これから産駒がデビューする種牡馬の考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる仮想配合(優秀な配合という訳ではありません)を、考察してみたいと思います。
では、今回は、タイトルホルダーです。
タイトルホルダー(ドゥラメンテ×メーヴェ by Motivator)牡・18生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:5 結:8 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:6 SP:4 ST:4 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M △ I ◎ C 〇 L □
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:低い 成長型:遅め
〇 短評
前面でクロスした、Mr.Prospector.Mill Reef.Hail to Reason.Northern Dancerは全て中間断絶クロスであり、一見すると煩雑な血統構成である為、確かに当馬の配合の限界点はここにあると言える。しかしながら、6代目において、母の主導であったNasrullah、父のスピード源であったAlmahmoudをしっかりとクロス。世代が一代進んでいる為、影響は弱くなったものの、父母の血の良さをしっかりと再現している点が最大の長所。この配合形態は、2代父キングカメハメハの最高傑作である、ローズキングダム(1A)と比較して、シンプルさには劣るものの相似性があり、当馬の配合も、かなりのハイレベルな配合だと言えるだろう。前面でクロスした各系統も強固な土台構造を形成した、Nearco19連、Hyperion18連を頼りにし、連動性が極めて高い。惜しむらくは日本適性には欠け、キレる脚はやや望みがたいものの、スタミナに裏打ちされたスピードにはかなりの良さがある配合である。本質は、芝向きの中~長距離タイプ。ダートはやや不得手だが、重馬場はこなせる可能性を秘める。
以上が、タイトルホルダーの血統評価となります。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、上げてみましょう。
・スピード系
Mr.Prospector.Hail to Reason
・スタミナ系
Mill Reef
・バランス系
Northern Dancer
これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。
・自身は、確かに優秀な配合であったものの、主導の明瞭性に難をかかえており、ここの補正は必要。具体的には、自身で強い影響を持ったMill Reefを一歩進めて、Shirley Heightsを4×4程度でクロスさせ、スタミナの核としつつ、明確な主導とするのが理想的か。
・また、現代競馬への対応力の確保の為に、スピードの核の形成を考えなくてはならないが、これは自身のスピードの核を形成したMr.Prospectorを再度利用したい所である。加えて言うのであれば、自身ではクロスしていないものの、その生かし方が良好なNureyevを内包した、その仔であるKingmamboを4×4程度でクロスさせ主導とするのも一つの選択肢ではある。
・更に、サンデーサイレンスを自身3代目に内包するが、Hail to Reasonの影響も強かった点を踏まえ、Haloクロスを作成。芝向きのスピードの核とする事も考えられる。ただし、この場合においては、サンデーサイレンスを主導に据えた場合を除き、サンデーサイレンスクロスは、主導勢力の明確性を乱す可能性を秘めており、サンデーサイレンスクロス自体は不要であると言える。
・ただし、自身がBe My Guestを内包した血統構成である為に、サンデーサイレンスクロスを作成した場合においては、その母Wishing Well内においてStymieを自動的にクロスさせる事ができ、そうした意味においては、サンデーサイレンスクロスを主導に据える事自体の可能性は秘めている。その意味において、サンデーサイレンスの系列クロスを主導とし、Sadler’s Wellsをクロスさせる事のできる、エピファネイア牝馬とは相性が良く、日本競馬への適性面を考えると、一考の価値はある。
・前述の通り、自身の血統構成は優秀ながらも、前面のクロスがメジャーな血で構成され、煩雑な血統構成をしているのは否定できない事実であり、何をクロスさせ、何をクロスさせないのか。これを平均以上に考える必要性が高い種牡馬である事は揺るぎない。
・とは言うものの、自身が抱えた血は、欧州のトップレベルにおいても通用する質の高い血を多数抱えており、きちんとした配合を考えられるのであれば、父を超える産駒の輩出も可能な血統構成である。
このような種牡馬としての特徴を持つ、タイトルホルダーですが、アトランダムな配合においては、サンデーサイレンス.Mr.Prospectorのクロスを並列させ、何を強調したいのかが不明瞭になる配合を多数輩出すると考えられ、詰めの甘い産駒を多数輩出する可能性が高い種牡馬であると言え、決してアベレージの高い種牡馬では無いと考えられます。とは言うものの、前述の通り抱えた血の質の高さは、近年に日本競馬においては、かなりのハイレベルである点は疑いようのない事実で、こうした血を生かした配合を、出せる種牡馬であるとも言えますが、それだけに、国内向きの種牡馬であるとは言い難い点は、指摘しておきたい事実であります。
これから種牡馬入りする為、まだ実際の産駒は誕生しておりませんが、こうした配合なら、という仮想配合を考えてみましたので、皆様の参考になれば幸いであります。
(タイトルホルダー×レディヴァルール by Multiplex)-・-生
有効世代数:9代目
Ⅰ 主:7 結:8 土:5 弱:1 影:1 集:5 質:5 再:6 SP:4 ST:4 特:0
合計:(46/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C ◎ L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め
〇 短評
主導は、父の血統内において最も強い影響を持ったMill Reef6×4の中間断絶を引き継いだ、Mill Reef5・7×5を伴う、Shirley Heights4×4。次いで、父のスピード源となっていたものの、中間断絶クロスであった点を補正した、Mr.Prospector5・6×5や、Specialを伴い、Northern Dancer-Natalma-Almahmoudと継続させたNureyev6×5、Hail to Reason6・8×6・7の中間断絶をスピードの核に、父のスタミナ源の一つであった、Buckpasser7・8×6・6や、Nijisnky8×6の系列クロスをスタミナの核にし、血統を構成。更に、Val de Loir8×6の中間断絶を、Blandfordを介し、直接主導勢力と連動させた点は見るべき部分である。父の抱えた問題点であった、主導の不明瞭さをある程度解消しながら、その質の高いスピード・スタミナを存分に生かした配合であり、再現度も非常に高い配合となっている。また、主導内においても、Pupyrusを伴うPrincequilloの系列クロスや、Count Fleet.Hyperion.Admiral Drake.Blandford.Felstead.Blue Peter(=Full Sail)-Fairway(=Pharos).Lalun.Djbel.Bimelechとクロスさせ、母方はやや弱いものの、その充足率も悪くなく、底力勝負に向く血統構成となっている。惜しむらくは、Graustark(=His Majesty)8×5の世代ズレや、サンデーサイレンスを4代目に配した際のネックとなる、その母Wishing Well内の弱点の派生。影響度バランスが(5-8-12-10)とやや崩れた点で、実際の競馬において不安定さを見せる可能性を否定できない点か。とは言うものの、非常に質の高い血でクロスを形成し、血の集合も母の父であるMultiplexへとある程度集め、父の血統構成において重要な役割を果たしたNearco.Hyperionをそれぞれ21連、16連と継続させており、これらが当馬の能力の源泉であると言える。本質は、芝向きの中~クラシックタイプで、ダートはこなせる程度だが、重馬場は得意なタイプ。決して開花率は高いとは言い難く、やや晩成傾向を示すものの、無事な開花を望みたい配合であり、開花した際には、欧州の12F戦でも決して遅れをとらない質実剛健な血統構成になっていると言えるだろうか。
最後になりましたが、これがタイトルホルダーの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。
(taku.O)
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