種牡馬考察 アルクトス

種牡馬考察 アルクトス

今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、先日種牡馬入りを発表されたアルクトスの考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、本年種牡馬入りを果たした為、当然の事ながら種付けすらまだでありますが、こうした配合ならば、といった仮想配合を考えてみたいと思います。

まずは、アルクトス自身の血統構成を簡単に振り返ってみたい。

アルクトス(アドマイヤオーラ×ホシニイノリヲ by シンボリクリスエス)牡・15生
有効世代数:9代目

Ⅰ 主:8 結:7 土:4 弱:1 影:2 集:4 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:1(主導牡牝を通じたクロス)
合計:(40+1/60)点 クラス:3B+
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C × L ×
ダ:S □ M 〇 I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:高め 成長型:早め

〇 短評

主導は、その父Hail to Reasonから継続させる、Halo4×4の系列クロス。その父Hail to Reasonを5・6×5・5・8と配し、米系が強い当馬の血統構成を明確にリードしている。続いて主導傘下のHail to Reason-Turn-to。次いでBold Rulerの系列クロス、Prince Roseを伴うPrincequillo.Polynesianを伴うNative Dancerの影響が強い。この配合の面白い所であり、最大に評価できる部分は、Northern Dancerクロスを用いる事無く、これらクロスの結合を、Haloがしっかり行えている点であり、近年では珍しい配合であると言える、細かく見ていくと、Bold RulerはNearcoで、PrincequilloはHyperion内Bayardoを経由して間接的に結合、Native DancerはPharamond(=Sickle)を通じて、そのスピード・スタミナをシンプルに主導たるHaloが統括しているのが見て取れる。これはかなり驚異的であり、きめ細かく血を生かした配合。更に付け加えるならば7~8代目のクロスもTenerani.Tourbillon-Ksar.The Boss.King Salmon以外は、全て主導と連動としているという念の入れ用である。惜しむらくは、Round Tableの世代ズレと、父母内に弱点を2ヶ所抱えた点であるが、前者はその父Princequilloがしっかり能力参加できている点、後者は9代目の配置を見る限り、その両者とも致命的であるとは言えない。本質は芝・ダート兼用のマイル~中距離タイプであり、重馬場はこなせる程度。ともすればマイナーな、父アドマイヤオーラの産駒ではあるが、一皮むけばこれだけの資質を秘めていると言える。その意味でも、是非開花を見たい名配合である。

 

以上が、アルクトスの血統評価となる。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思う。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、上げてみよう。

・スピード系

Halo-Hail to Reason-Turn-to.Bold Ruler.Pharmond(=Sickle).Almahmoud.Menow

・スタミナ系

Princequillo-Prince Rose.Papyrus-Tracery.Bull Lea-Bull Dog-Teddy/Plucky Liege

・バランス系

Native Dancer

これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思う。

・主導面においては、近年でも珍しいHaloを系列クロスとした配合であり、この継続が望ましい。具体的には、再びHaloを主導とし、外交的な配合を作り上げ結合面に良さを出す方向性と、その仔であるサンデーサイレンスを4×4程度でクロスさせ、欧米系の入り混じる当馬の血統構成を纏める方向性が考えられる。

・また、主導面において、もう一つの可能性はその内部の生かし方が良いRobertoを主導とするやり方も考えられる。この場合サンデーサイレンス-Haloはクロスさせない方が良く、これについては難しくあるものの、Robertoを主導に据える事によって、ある程度スタミナ面に良さがでる可能性は秘める。

・更にこれらを踏まえて、サンデーサイレンス-Haloを主導とし、Robertoをスタミナの核として同時にクロスさせる方法も考えられる。ただしこの場合においては、血の集合が散漫になる懸念は残り、サンデーサイレンス4×4ないし、4×5にした上で、Robertoを5×5以下の世代にする必要がある。

・父となるアルクトスは明確なスタミナの核をPrincequillo-Prince Roseとし、9代目で主導と連動させる事に成功したが、代が1代進む産駒においては、この結合が難しくなり、ここの部分のテコ入れは必要。具体的には、自身の中で眠っているSir Gaylordをクロスさせ、主導と連動させる方法が現実的であると考えられる。

・それでも、全体的にスピード色の強い配合であり、距離を延ばす配合を望む場合は、自身では眠っている父母内アグネスレディが抱える、重厚な欧州系で構成されたリマンドを再現する方法や、Hoist the Flag.Nijinskyを利用する方法が望ましい。ただし、この場合においても、Nijinskyを除き、想定される主導勢力との連動がはかられない可能性が高く、本質的には、芝・ダート兼用のスプリント~マイルタイプの産駒を輩出する種牡馬であると認識した方が良いだろう。

・反面、スピードの引き出しは非常にしやすい種牡馬であり、自身の主導となったHaloをはじめとして、Pharamond(=Sickle).Almahmoud.Bold Rulerと、現代的な血統で構成されており、この観点からアトランダムな配合においてもスピードが豊富な産駒が期待できる種牡馬である。

・また、Hyperion等の結合面を踏まえて、Northern Dancerのアシストは欲しい所。この場合のNorthern Dancerは、中間断絶でも系列クロスでも良く、非常に位置の良い配置をしていた、父アルクトスの長所であると言える。

・加えて、自身の中で完全に眠っており、弱点を派生させたビワハイジ内の独系統をクロスさせる事を、上級配合を望むなら考える必要がある。ただし、この解消は非常に難しく、比較的相性が良い血統を上げるならば、マンハッタンカフェ、ノヴェリストはその選択肢には入る。ただし、この組み合わせにおいても、その連動性は難しく、弱点の派生がほぼ必ず派生する為、国内においては、取り扱いの難しい血を抱えた血統である点は考慮しておきたい。

・最後に、自身はNearco-Pharos(=Fairway)を土台構造とした血統構成で、サンデーサイレンス直系でありながら、Hyperionは9連と少なく、母となる繁殖牝馬においても、Nearco系が強い血統が望ましいと考えられる。

このような種牡馬としての特徴を持つ、アルクトスだが、アトランダムな配合においては、サンデーサイレンス4×4の系列クロスを、明確な主導とする配合が多く見うけられると考えられ、これは時代を先取りした配合形態である。その意味においては期待が持てる種牡馬である。また、前述のように、自身が抱えたスピードの血を再利用する事が、非常に容易な配合である為に、シンプルにまとまった配合を作りやすく、開花の早い、芝・ダート兼用のスプリント~マイルタイプの産駒を多数輩出すると想定される。その意味において、自身の競走馬としての実績以上の活躍を、種牡馬として見せても筆者としては何も不思議には思わない、名種牡馬としての資質を秘める血統構成である。

また、ここで冒頭に語った通り、種牡馬アルクトスの仮想配合を考えてみたいと思う。

(アルクトス×スプレンディダ by ショウナンカンプ)-・-生
有効世代数:9代目

Ⅰ 主:8 結:6 土:4 弱:1 影:2 集:6 質:3 再:5 SP:4 ST:4 特:1(主導牡牝を通じたクロス)
合計:(43+1/60)点 クラス:1A+
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I ◎ C □ L ×
ダ:S △ M ◎ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:高め 成長型:早め

〇 短評

母は、2022年現在現役(中央未勝利)。主導は、父の傾向を引き継ぎサンデーサイレンス4×4の系列クロス。次いで、Northern Dancerを伴うNijnsky5×5・7、Raja Baba6×7の系列クロスの影響が強い。また、7代目となるものの、Hyrry Onを伴うCourt Martialの影響も比較的強く、その意味において、父であるアルクトスよりもスタミナに良さがあるタイプの配合となった。父の種牡馬としてのネックとなりやすい独系統だが、父方ビワハイジと母方ノヴェリストが呼応したことにより、連動こそせず、弱点を派生しているものの、Alchimist. Ticino.Asterusとクロスさせ、辛うじてだが独系統をクロスさせたのは見るべき部分である。また、父の抱えたスピード源であるBold RulerをRaja Babaをクロスさせる事により前進させ、Almahmoud.Pharmond(=Sickle)を再度クロス。そのスピードをしっかりと再現している。惜しむらくは、前述の弱点や、Sharp Queen内の欠陥や、7代目以降の連動性の弱さだが、前面のクロスの連動性はかなり高く、Coz o’Nijinskyを通じてTourbillonを連動させるなど、味のある部分も持つ。更に血の集合を強調した父父アドマイヤオーラに集め、主導内においてもStymeをクロスさせ、弱点の派生を防ぐなど、シンプルにまとまった好配合となった。本質は、芝・ダート兼用のマイル~中距離タイプ。重馬場もこなせる全天候型。開花は比較的早いと想定されるが、前述の弱点・欠陥の派生から思ったほどの成長を見せない可能性は指摘しておきたい。それでも開花率は高いタイプの配合だと言えるだろう。血統構成は父を超え、安定感には欠けるかもしれないが名馬のそれであり、種牡馬アルクトスの潜在能力の一端を垣間見える配合となっているのではないだろうか。こうした配合が試まれ、名馬アグネスレディの子孫であるだけでなく、もはや貴重となったアグネスタキオン直系の血が残る事を切に願うものである。

 

最後になりましたが、これがアルクトスの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。

(taku.O)
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