種牡馬考察 モーリス

種牡馬考察 モーリス

今回の血統研究所は、種牡馬考察と銘うって、今年度に産駒がデビューする種牡馬の考察を行いたいと思います。まず、種牡馬となったサラブレッドの血統構成を簡単に説明した上で、必要な血(これをキーホースと言います)がどういったものなのか、どういった配合が好ましいのか。更には、アトランダムな配合において想定される産駒の傾向を考察していきたいと思います。また、自身の目からみて血統構成上、面白いと思われる産駒(優秀な配合という訳ではありません)をピックアップし、簡易考察をしてみたいと思います。

 

では、今回は、モーリスです。

 

モーリス(スクリーンヒーロー×メジロフランシス by カーネギー)牡・11生

有効世代数:9代目

 

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:3 影:2 集:5 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0

合計:(41/60)点 クラス:3B

Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□

芝:S × M 〇 I 〇 C △ L ×

ダ:S △ M □ I △ C × L ×

芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇

Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め

 

〇 短評

 

主導は、中間断絶だがNorthern Dancer5・5×4・5。少し蛇足になるが、簡単に中間断絶クロスを主導とみなした理由を先に述べてみたい。本来、中間断絶クロスを主導とみなす事は非常に稀で、いくつかの条件を揃えた場合のみ、主導とみなしている。当馬の場合は、母父カーネギー内にあるNorthern Dancerが4代目からクロスし、その内部のクロスが6代目から系列クロスを形成しているが、5代目以前においてNorthern Dancer内部以外の系列クロスを形成していない点、5代目のHail to Reasonは単一クロスで影響が弱い点、またNorthern Dancerの祖父母4頭である、Nearco.Lady Angela.Native Dancer.Almahmoudが全てクロスし、そのうちNative Dancer以外の3頭が系列クロスを形成している点。以上、3点から当馬の場合は中間断絶でこそあるものの、カーネギー内のNorthern Dancerを主導と判断するものである(ただし、真の意味の名血を目指すなら、やはり系列クロスを主導とするべきであろう)。次いで6代目までにおいて影響を持った血である、Nearco.Almahmoud.Lady Angelaは前述の通り、Norhern Dancerの傘下にあるクロスであり直接結合を果たしている。次に、RibotはPharosで、NasrullahはNearcoで、PalestinianはHail to Reason内Teddyを経由して、Nearcoで間接的に主導と結合を果たしている。そして、前述のHail to ReasonがBlue Larkspur.Man o’War等の米系を統合し、主導勢力へと連動させている。また、これといった弱点が無い配合で安定感のある血統構成。スピード勢力はLady Angela.Almahmoud.Nasrullahを中核に、Pharamond(=Sickle)等、サンデーサイレンス内のスピードが生きている為、なかなかに優秀。また、スタミナ勢力はRibotを中核にした配合だが、Solario.Tourbillon-Ksar.Sir Gallhad(=Bull Dog)等のアシストがあるが、Solario以外は結合も弱く、本来中距離スタミナタイプであるNorthern Dancerが主導である事を踏まえても、距離にある程度の壁があるタイプであると考えられる。惜しむらくは、前述の通り主導勢力が中間断絶クロスである点と、影響度バランス上の強調部分は、カーネギーにあるが、血の集合が弱い点か。本質は、マイル~中距離の芝向きタイプ。ダートはこなせる程度だが、重馬場はこなせる可能性を秘める。

 

以上が、モーリスの血統評価になります。これが種牡馬となった際にどのような産駒を輩出するかを、ここから考察していきたいと思います。まずは、当馬の血統を構成する際に必要な血(キーホース)とはどのようなものか、まず上げていきましょう。

 

・スピード系

Lady Angela.Almahmoud.Nasrullah.Pharamond(=Sickle)等

 

・スタミナ系

Ribot.Tourbillon-Ksar. Sir Gallhad(=Bull Dog).Hurry On.Man o’War等

 

・バランス系

Northern Dancer.Hail to Reason.Blue Larkspur等

 

これらを踏まえて、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。

 

・種牡馬となった際にこれらのキーホースをおさえる為には、引き続きNorhern Dancerを主導とすると、結合面の弱さが出る為、その産駒を主導勢力としたい。ただし、産駒においてSadler’s Wellsが4代目に来るものの、Danzig.ノーザンテースト.Lyphardは5代目に位置し、カーネギー内のNorthern Dancerが同位置に来るのは注意。従って父を生かす産駒を作ろうとするよりも、母を強く出した方が、良さが出やすい血統構成だと言える。

・それでも父内において血を纏めたい場合、日本向きのスピードが不足する可能性を踏まえても、主導勢力はほぼSadler’s Wells一択だと言える。次いでHalo.Robertoも可能性があるが、この場合Northern Dancerの仔のクロスは不要で、Turn-toもしくはRoyal Chargerのクロスは必須。更に血の流れが父と異なる為、開花率は低いと想定される。

・自身の血統で、Hail to Reasonの果たした米系の連動役は、産駒においても有効だが、Man o’Warが10代目に位置するのは注意が必要で、どちらかと言えば、Ribot.Tourbillon-Ksar等の、欧州系をしっかりと生かした方が良い血統構成だと言える。

・全体的にPharos(=Fairway)が強い配合で、Hyperion. Sir Gallhad(=Bull Dog)の影響は約半分にあたる、これらを踏まえると、繁殖牝馬側においてもPharos(=Fairway)系が強い配合が望ましい。

・自身の血統構成上において5代目まで位置する血を考えると、自身を彷彿とさせるマイラーとしての、スピードを引き出すのはやや難しいと言える。その点においても母方からのスピードアシストは必須。具体的には母にNureyevを配置し、Sadler’s Wellsとの連動でSpecialをクロスさせるやり方が一番現実的であると言える。また、Mr.Prospectorを配置し、Nashua-Nasrullah.Raise a Nativeのスピードを引き出すやり方もある。また、カーネギー内のRivermanに注目し、自身では眠っているNever BendやPrince Johnを活用するやり方や、モデルフール内Tom Foolを活用するやり方も考えられる。

・また、スタミナ勢力は、自身のスタミナの核を形成した、Ribotの再利用を検討したい。具体的にはHis Majestyをクロスさせるやり方が最も現実的か。次に、Lyphard内のGoofed内の生かし方が良いのを利用し、Court Martialを使うのも考えられる。また、前述の主導勢力の部分でも述べたが、主導にSadler’s Wellsを配し、そのスタミナを柱にするやり方も現実的であると言える。

・産駒において散見される、サンデーサイレンスクロスだが当馬において有効とは言えない。現在サンデーサイレンスクロスの効果が表れはじめているが、大多数がエピファネイア産駒におけるもので、これはエピファネイア自身がHail to Reason-Turn-to-Royal Charger-Nearcoと系列クロスを形成し、それを主導にしている為で、サンデーサイレンスをクロスする事により、自動的に自身の良さをある程度再現できる為であり、他の種牡馬において、サンデーサイレンスクロスを有効なものにする為には、母方のアシストが必要不可欠である為、現時点ではそこまで、繁殖牝馬側にサンデーサイレンス内の血の浸透がはかられていない点は、留意すべきである。特に当馬においてはHail to Reasonがクロスしている為、クロス状態がサンデーサイレンス-*-Hail to Rseson-*-*-Nearcoとなりやすく、本質的には不要なクロスであると言える。また、これはエピファネイア産駒にも言える事だが、サンデーサイレンスが4代目に配された場合、非常に軽微であるが弱点を派生させやすい点は指摘しておきたい。

・デインヒルを持つ繁殖牝馬とはかなり相性が良く、位置の問題を母方でクリアできれば、スピードに優れた産駒の輩出は可能だと言える。重ねて言えば、ガリデイン配合と呼ばれるGalileoとデインヒル牝馬の相性を利用した産駒の血は、当馬においても良好な相性を持つと言える。

 

このような種牡馬としての特徴を持つ、モーリスですが、アトランダムな配合においては、自身が前面に持つ血に、Sadler’s Wells.Danzig.ノーザンテースト.Lyphard.Roberto-Hail to Reason.サンデーサイレンス-Haloとメジャーなものが多く、これらがアトランダムにクロスする確率が高い為、アベレージの高い種牡馬だとは言えないでしょう。また、前述のスピード・スタミナの点でも述べましたが、その引き出し自体は難しい部分があるのは事実で、スピード・スタミナともに欠けた産駒が輩出される可能性を否定できません。芝向きタイプが多いと予測されますが、結果的にダートを使われる産駒も出てくるでしょう。しかしながら、抱えた血の質は高いものが多く、シンプルな配合をつくりつつ、そのスピード・スタミナを十全に引き出せれば、父のようなマイラーでは無く、中距離で底力勝負できる様な名馬を出せるでしょう。また、そういった配合も何頭か散見されました。また、産駒全体の傾向として、やや重くなるタイプが多く、どちらかと言えば牡馬に活躍馬を輩出するタイプだと考えられます。ただし、これはあくまでも紙面上における考察でしかありません。現実は紙面上の想定を易々と超える事を何度も見てきましたし、父を彷彿とされる産駒の登場を願ってやみません。最後に、注目の産駒を一頭取り上げ得て今回の執筆を終えたいと思います。

 

注目の産駒

 

・ボカイウヴァの18

主導は、父のカーネギー強調の流れを引き継ぎSadler’s Wells4×4の系列クロス。次いで、Petitionの落失が惜しまれるが、Danzig5×5。この両者においてスピード・スタミナの両輪を作り上げている。また、母母方にNureyevを抱え、Gold Bridgeの落失が惜しまれるが、Specialがスピードをアシストし、主導の重さを若干緩和している。更に、Seeking the Goldにより、Nasuha.Raise a Native.Tom Foolのスピードを補給。スタミナは主導となったSadler’s Wellsを中核に、His Majesty-Ribotがアシスト。また7代目以降になるが、Hurry Onを生かしたCourt Martial.Djbel-Tourbillon-Ksarときめ細かく血を生かした配合。加系である、Victoria Park等のクロスの結合の弱さが惜しまれるが、総合的には自力勝負に向く芝向きの中距離タイプ。シンプルさを欠くために晩成タイプで、開花率は決して高いとは言い難いが、種牡馬モーリスのモデルケースとなり得る配合だと言える。

 

最後になりましたが、これがモーリスの、種牡馬としての考察となります。あくまでも紙面上の考察ですが、面白く見て頂ければこれに勝る嬉しさはありません。今後とも競馬総合サイトG-ZEROと、血統研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

(taku.O)

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